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自動車産業インフォメーション

2020年7月2日

自動車メーカー、SDGsへ取り組み コロナ禍で意識

自動車メーカーが国連の提唱する「SDGs(持続可能な開発目標)」の取り組みを改めて重視している。新型コロナウイルスで社会的な制限やサプライチェーンが寸断し、事業活動の停滞を迫られた経験がSDGsの重要性を再認識させる契機となった。

足元の事業環境が悪化する中、短期的視点の収益確保と同時に持続可能な成長基盤の構築を急ぐ。

「われわれの使命は、自分以外の幸せを願い、行動できるトヨタパーソンを育てることであり、SDGsに本気で取り組むことだ」。5月の決算会見でトヨタ自動車の豊田章男社長はこう意思表示した。

自動車メーカーがこれまでSDGsに本気で取り組んでいなかった訳ではない。各社は二酸化炭素(CO2)の排出量削減や交通事故の抑止をはじめ、それぞれSDGsで掲げる目標の達成を目指してきた。

ただ、今回のコロナ禍が持続可能性の重要性を強く意識させた。

5月以降の決算会見や株主総会では、トヨタのほか、「個性と技術革新で脱炭素社会の実現を目指していく」(スバル・中村知美社長)、「ESGの取り組みを通じて積極的にその責任を果たしていく」(スズキ・鈴木俊宏社長)などと各社のトップがSDGsの取り組みを再度強化する考えを示した。

ウィズコロナの時代に各社の持続可能性に対する意識が表れた例の一つが医療物資の生産だ。

足元の業績は低迷するものの、地域社会が健全でなければ収束後の回復も遅れる。各社は、自動車生産の技術を生かしてフェイスシールドなどを製造。感染拡大の防止に向けた取り組みを迅速に展開した。

サプライチェーンを維持するために、日本自動車工業会など自動車4団体が連携して発足した互助会や、リーマンショックの反省を踏まえて自動車各社が雇用維持に懸命なことも中長期的な経営を重視している証左といえる。

SDGsの目標の一つである環境貢献も加速しそうだ。コロナ禍による都市封鎖などで自動車の交通量が激減したインドや中国では一時的に大気汚染が大幅に改善した。

フランス政府やドイツ政府は、自動車産業の救済策の一環で電気自動車(EV)の普及を推進する補助金を導入。コロナ後の社会を再設計していく過程で自動車の環境対応が進むとみられる。

日本経済団体連合会(経団連)でSDGs本部長を務める長谷川知子常務理事は「SDGsの達成に貢献するといえた企業が勝ち組であり、そういう企業しか生き残れなくなる」という。

厳しい環境下でいかに長期的な視野の企業経営を貫けるかが各社の将来を大きく左右しそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月29日掲載