2020年7月1日
車体・架装メーカー各社 人材育成に力
車体・架装製造は、顧客からの要望に合わせて、一つひとつ部品を取り付けていくため、自動化が難しい。一部を除いて大半が人の手による作業となっている。
このため、技術研修や人材教育が重要で、日本自動車車体工業会(車工会、木村昌平会長)をはじめ、架装メーカー各社は人材育成に注力している。
車工会では、会員企業各社から特に要望の強い技術的支援活動の一環として、人材育成に向けた支援に取り組んでいる。従来の技能教育では、熟練の作業者が若手に一つ一つ教えていくという方法が主流だった。
しかし、昨今の人手不足の中、限られた人材で教育を行うのは難しくなっている。特に、中小企業では人材育成をシステム化することは困難だ。そこで、車工会が主体となって中小企業の各リーダーを対象に、「現地現物による技能系社員研修」を毎年開催している。
同研修会は、2019年にトヨタ車体、トヨタ自動車東日本、日産車体の3社を会場に行った。毎回7社程度の中小企業を招き、1回につき10~15人の少人数で行うことで、マンツーマンの実技や座学を実施する。
18年はトライアルの1回を含めた全ての回の参加者数が合計49人に上ったという。研修は複数社合同で実施するため、参加企業は他社との意見交換を通してより効率的な教育方法を模索できる。
20年度も開催を予定しているが、現在は新型コロナウイルスの影響で日程を見直している。車工会の担当者は「秋以降の開催に向けて検討を進めているところだ」と話した。
今年度の開催企業については、従来通りトヨタ車体、トヨタ自動車東日本、日産車体の3社を見込んでいるとした。
車工会では、同研修会のほか、課長・部長クラスの監督者に向けた「管理監督者層合同研修会」も毎年行っている。会員企業から30~35人程度が参加し、講師を招いてマネジメントなどについて学べる機会を提供している。
今年は6月に開催予定だったが、新型コロナウイルスの影響で日程を変更し、10月30日の開催を予定している。
車体・架装メーカー各社でも独自に工夫を凝らして人材教育に取り組む。
日本トレクスでは、今年度31人の新入社員が入社し、新人研修を受ける。同社の新人研修では、社外で約2カ月間にわたり機械の扱い方などの講習を受ける。現場に入る前に基礎的能力を身に付けてもらうために実施している。
日本フルハーフでは、「ものづくり道場」と題して工場内に人材教育のコーナーを設置している。体感教育を重視し、事故が起きた事例を実際に体験することで、安全面の意識向上や技術力の養成に役立てている。
また、溶接練習や製品不良の発生原因についての指導も、実際の現場に近い状態で学ぶことができる環境を整えている。
このほかオートワークス京都では、各作業員の持つスキルに注目し、「スキルマップ」を作成している。技能の取得計画を明確にすることで意欲向上にもつながるという。
新型コロナウイルスの影響で新人研修に影響が出ている企業もあるものの、架装メーカーにとって人材教育は要だ。車工会をはじめ、各社は今後も、新たな方法を模索しながら取り組んでいく方針だ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞6月27日掲載