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自動車産業インフォメーション

2020年6月26日

交通政策白書 コロナ禍、公共交通事業者に影響

新型コロナウイルス感染症の影響が国民生活を支える公共交通機関を運営する事業者の経営状況に影を落としている。国土交通省がまとめた「2019年度交通の動向・20年度交通施策(交通政策白書)」によると、4月時点で貸切バス事業者の約9割で運送収入が前年同月に比べて70%以上減少した。

乗合バス事業とタクシー事業でもそれぞれ約6割の事業者で、運送収入が半減している。足元では都道府県をまたいでの移動自粛要請が緩和されるなど、人々の往来が回復フェーズに入っている。今後、いかに感染の第2波を抑えつつ、各事業者の経営改善を早期に進められるかが、重要な課題となっている。

同白書は交通政策基本法に基づき、毎年国会に報告しているもの。最新版では新型コロナの感染拡大を受け、交通政策にも大きな影響が出ていることから、4月末までのデータを取り入れ、各交通機関の影響度合いを特別にまとめている。

自動車関連で見ると、同白書で「ほとんどバスが動いていない状況」とした貸切バスのマイナスが目立つ。新型コロナの感染を抑えるため、政府や自治体では不要不急の外出の自粛を要請。観光やイベントに急ブレーキがかかったあおりを受けたとみられる。

実際に運送収入で前年同月比70%以上の減少としていた事業者は2月時点では全体の2%程度だったが、3月に77%、4月は92%まで急拡大している。白書には取り入れられていないものの、国交省の最新のデータでは5月も87%となっており、困難な経営環境にある事業者は少なくなさそうだ。

コロナ禍にあっても、国民の生活を支えるものとして運行を続けてきた乗合バスやタクシーへの影響も小さくない。4月は運送収入だけでなく、輸送人員も半減しており、減便や休車に迫られる事業者も少なくなかった。しかし、緊急事態宣言の解除を受け、通勤や通学など人の流れが増えており、今後への明るい兆しも出始めている。

国交省では今夏にも観光需要喚起キャンペーンを導入するなど、公共交通機関を含めた反転攻勢に乗り出す方針。しかし、再び感染が急拡大する局面に入れば、こうしたシナリオは崩れる。国交省は事業者や利用者双方に、感染抑制につながる対策のガイドライン順守を周知していくことで、公共交通事業者の生き残りを支援していく考えだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月23日掲載