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2020年6月25日

道路政策ビジョン、新生活様式に着目 20年後想定で施策提言

2040年における日本の道路のあり方を提言する新たな道路政策ビジョンがまとまった。国土交通省の社会資本整備審議会・道路分科会基本政策部会で検討してきたもので、こうした長期ビジョンを示すのは約20年ぶり。

自動運転を見据えたデジタル技術による道路の進化だけでなく、20年後に想定される新たな生活様式に着目し、道路をコミュニケーションの場とするような〝人〟にスポットを当てた道路像も提案している。

国交省では同ビジョンを長期戦略に生かすだけでなく、新型コロナウイルス感染症の収束後の道路政策の立案にも役立てていく考えだ。

新たな長期ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」は、石田東生部会長(筑波大学名誉教授)から赤羽一嘉国交相に手渡された。

自動運転やMaaS(サービスとしてのモビリティ)に対応した都市交通システムのほか、自動運転トラックによる幹線輸送やロボット配送での持続可能な物流システムの構築といった進化していく道路の姿を占った。

また、古くから道路は人が中心となっていた点に着目。進化の一方で、原点回帰し、人とクルマが安全に共存できるユニバーサルデザインの道路形成なども訴えている。

感染症だけでなく、年々増えている日本を襲う災害への対応力も高める必要があると指摘。防災機能の強化によって「被災する道路から、(人々を)救済する道路を目指す」(石田部会長)ことで、国民の暮らしを守る基盤としても役立てていく狙いだ。

足元の新型コロナ対策にも活用していく。国交省では同ビジョンを1つの問題提起に位置付け、コロナ禍によって大きく変容を迫られる国民生活に対応した道路施策の具体化にも取り組んでいく方針。

この実現に向け、企業や大学などを対象に7月17日まで幅広く意見を受け付け、これらを含めて、直近の政策立案にも生かしていく。

ビジョン自体の性格も大きく様変わりした。従来の長期目標は道路ネットワークの拡大といった数値的な目標が示されることが少なくなかった。しかし、今般の新ビジョンでは、こうした視点での提言はなくなっている。

国交省では生活に必要な道路を整備していく考えに変わりはないものの、今ビジョンでは社会課題の解決を目指す内容がメインとなった点も注目される。さらに、これからの時代を担う若年層の意見や考えも積極的に取り入れたという。

日本の持続的成長を目指す上でも、ビジョンづくりが大きなターニングポイントを迎えたとも言えそうだ。

提言を受け取った赤羽国交相も「道路は国民生活のためにあるセーフティーネットそのもの」と、道路の重要性を強調する。その上で、「具体化するのがわれわれの仕事」と着実な実現に向けて歩みを進めていく考えを示していた。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月22日掲載