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2020年6月22日

部工会新会長が会見 これまでの延長線上ではないものづくりを

日本自動車部品工業会(部工会)の尾堂真一新会長(日本特殊陶業代表取締役会長)は18日に東京都内で行った記者会見で「これまでの延長線上ではないものづくり」が重要になると強調した。

長年にわたる伝統と職人の技に支えられた日本のものづくりを残すために、デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が必要と見ており、グローバル競争力の維持、強化のみならず、新型コロナウイルス感染拡大のような未曽有の事態に直面した際のリスク最小化を重視した。

尾堂新会長は記者会見で、今後取り組む3つの方向性を示した。1つ目は喫緊の課題であるコロナ禍対応。

日本自動車工業会、日本自動車車体工業会、日本自動車機械器具工業会とともに準備を進めるファンド創設について、部工会は「自工会を中心に検討している」と公表するにとどめたが、尾堂新会長は「自動車産業における技術と人材を守り、日本のものづくり基盤を死守していくために取り組んでいる。コロナ禍という未曽有の状況に対し、迅速かつ的確に対応するようさまざまな施策を講じていく」と述べた。

2つ目に挙げたのが、日本のものづくりをいかにして残すかという点だ。DXを進める方向性を示したのは「長年の伝統とものづくりに長けた職人の技を含めて、これまでの延長線上のものづくりで素晴らしい成果を出してきたが、現状、日本は欧米から一歩も二歩も後れを取っている」との危機感が背景にある。

従来の原価改善手法が限界にきているとの認識も後押ししている。尾堂新会長は「乾いた雑巾を何回も何回もしぼって原価改善してきた。この手法はもう限界にきている。この壁を打ち破るのがDX」と話す。

日本の製造業を支えるものづくりとDXを融合させるためにも「部工会という組織を活かした他社との連携、情報共有などで、部品メーカー全体として新しい手法が見つかればいいと思う」との意気込みを示した。

3つ目に言及したのが、新たなグローバル体制の構築だ。尾堂新会長は「すべてが一瞬で止まってしまうコロナのような事態になったとき、将来も起こりうるとの想定で新しいグローバル体制を構築しないといけない」と強調した。

具体例として述べたのが生産体制の「一極集中」の見直しだ。これまで部品各社は、グローバル競争を勝ち抜くため一極集中の生産でコスト競争力を高めてきたが、コロナ禍で状況は一変した。

尾堂新会長は「コロナ禍のような事態で(サプライチェーンが)分断される事態になると、今度は各消費地ごとでの生産になっていく」と指摘。その上で「消費地に近いところで生産を行うためにいかにコストを下げるか。競争力を維持しながらリスクも最小限に抑えるようなイメージを持っている」との見解を示した。

現状、コロナ禍の影響で自動車メーカーの本格的な生産回復時期が見通せない。部品メーカーが置かれた状況は厳しく、尾堂新会長は「バブル崩壊時やリーマンショック時よりも深刻」と強い懸念を露わにした。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月19日掲載