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2020年6月16日

タフト発売で注目の軽SUV 小さな車体に遊び心いっぱい

ダイハツ工業が新型車「タフト」を投入したことで注目される軽自動車のクロスオーバー市場。レジャーも街乗りもこなす使い勝手の良さに加え、アウトドアブームの再来が後押しし、同市場は拡大傾向にある。

これまでの軽市場の歴史を振り返ると、スズキ「ジムニー」をはじめ本格的なクロスカントリーからクロスオーバーまで、軽SUVは多数存在した。小さな車体に遊び心を詰め込んだ軽は、いつの時代も輝きをみせる。

10日に発売した新型タフトは、厳密にいうと2代目モデルとなる。初代は1974年に登場した登録車で、ラダーフレームを採用した本格派SUVだった。登録車の本格SUVと軽のクロスオーバーではジャンルが異なるが、36年ぶりにタフトの名が復活を果たしたことになる。

登録車SUVでは90年に「ロッキー」を投入したが、こちらもジャンルは違えど初代生産終了から約20年ぶりに2代目が投入されたばかりだ。

ダイハツの軽SUVでは、98~2012年まで販売していた「テリオスキッド」が記憶に新しい。軽四輪車の規格改定に合わせて投入したテリオスキッドは、従来のSUVに乗用車の使い勝手を融合させた軽クロスオーバーの草分け的なモデルだった。

1998年10月の軽規格改定時には、テリオスキッドと同じクロスオーバーに近いコンセプトを採用したスズキ「Kei」、ホンダ「Z」がそれぞれ登場した。ただ、3車種とも全面改良を迎えることなく10年前後でモデルライフを終えることとなる。

数年の空白期間を経て、2014年1月に登場したのがスズキの初代「ハスラー」だ。発表当時、鈴木修会長が「出張先で『Keiに似た車をつくってほしい』とスズキユーザーから言われたのがハスラー誕生のきっかけ」だったと明かしている。

旧来からあった軽クロスオーバーのカテゴリーに属しながら、「遊べる軽」を前面に打ち出したコンセプトが当たり、瞬く間に大ヒット車となった。

ハスラーは遊び心を具現化したポップなデザインと、ベース車となった「ワゴンR」譲りの優れた使い勝手が評価され、幅広い客層の取り込みに成功した。

発売当初は受注が積み上がり長納期化していたが、事実上ライバル車が不在の中でモデル末期でも月販5千台程度の高い水準を維持してきた。20年1月に投入した2代目はデザインをキープコンセプトとしながら、中身は一新し商品力を引き上げた。

ダイハツが満を持して投入した新型タフトは、「(ハスラーを)横目で見てガチンコで比較して開発したわけではない」(製品企画部小村明紀チーフエンジニア)という。ヘッドランプをはじめボディー全体が直線的でゴツゴツとしたデザインはハスラーと対象的だ。

車内は後席から荷室部分を人間が背中に背負うバックパックに見立て、遊びを楽しむためのフレキシブルスペースとするコンセプトを導入。軽乗用車でほぼ〝絶滅〟状態のガラスルーフを標準化するなど、ハスラーとは異なる切り口で遊び心をとことん追求した。

新型コロナウイルスの影響で販売店では新型車の販促活動が積極的に展開できない中、新型タフトは発売日までの予約受注で月販目標の2倍となる8千台を積み上げ、好調な滑り出しをみせている。

小村チーフエンジニアは「県境を越えて出かけるのを控える時期ではあるので、そういった中でも日常を非日常と感じてもらえるクルマ」とし、「コロナ禍だからこそタフトを選んでほしい」と述べる。まじめにつくった「遊びグルマ」が新型コロナで冷え込んだ市場のカンフル剤となるか、注目される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月13日掲載