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2020年6月15日

勢いづくかPHV市場 トヨタRAV4へ追加で高まる期待

トヨタ自動車がSUV「RAV4」にプラグインハイブリッド車(PHV)を追加した。従来のガソリン車、ハイブリッド車(HV)に加えて、ラインアップを拡充し、幅広い層の需要を取り込むのが狙い。市場が拡大基調のSUVに新型車を投入することでPHVの販売台数全体を底上げする役割を担う。

特にPHVは電気自動車(EV)の静粛性や力強い走りとガソリン車の使い勝手の高さを両立する。自動車業界の変革期の中でEVが普及するまでの「次世代自動車の本命」と称されるほど、拡販への期待は高まっている。

ただ、国内外の自動車メーカーがさまざまなサイズ、ジャンルのPHVを発売しているが、現実的には販売台数は伸び悩んでいるのが実情だ。RAV4PHVの投入を契機に、本格的にPHV市場が盛り上がるか。

トヨタ車のPHVは「プリウスPHV」に次いで2車種目。2011年からの「30系」にPHVを追加投入したのに引き続き、17年から現行モデル「50系」にもラインアップを追加した。従来までHV「プリウス」と外観上の違いがなく、PHVの先進性のイメージ浸透できなかったのを反省し、引き締まったフロントフェイスで登場した。

三菱自動車も13年に「アウトランダーPHEV」を投入した。SUVとしてのスペースユーティリティと使い勝手を両立することでPHV市場を開拓した。15年のマイナーチェンジでは三菱自の「ダイナミックシールド」をフロントフェイスに取り入れるなど商品力の向上も図った。

ホンダは18年に「クラリティPHEV」を発売した。燃料電池車(FCV)と同様にリース販売に限定しているものの、ホンダの電動車販売の先駆者の役割を持たせている。

PHV市場には輸入車勢も相次いで商品を投入している。ボルボ「XC90」、ポルシェ「パナメーラ」、メルセデス・ベンツ「GLCクーペ」、BMW「i8」「X3」などタイプ、ボディーサイズともさまざまでユーザーのすそ野を拡大した。

とはいえ、普及は伸び悩んでいるのが実情だ。19年度のPHVの販売台数は前年度比19・1%減の1万7077台と大幅減となった。拡販のネックとなるのが車両金額の高さ。メカニズムがHVと比較して複雑にならざるを得ず、リチウムイオン電池の値段分だけ高額になっている。

車種によってはガソリン車から100万~数百万円高くなる場合もある。その半面、外観で差別化が果たせず、ならではの「特別感」がないことからユーザーにとっては高額になっても購入するメリットが薄いこともありそうだ。

その中でRAV4PHVはモーターの単体出力をHVの88㌔㍗から134㌔㍗と5割以上も高出力化して登場した。システム全体の出力は225㌔㍗(306馬力)とHVを4割近く上回り、軽快な走りを実現する。

いわば〝スポーツカー並みの走り〟を訴求することで購入を喚起する。従来のPHVの訴求方法とは異なる方針で販売台数の伸長を図る。その戦略が功を奏するのか。今後の販売動向に注目が集まる。

 

 

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月12日掲載