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2020年6月10日

富士経済調査、燃料電池の世界市場 今後10年で20倍超に

富士経済(清口正夫社長、東京都中央区)は、燃料電池の世界市場を調査し、2030年度に同市場が18年度比22・6倍の4兆4724億円に大きく拡大すると予測した。

定置用(産業・業務用、家庭用)が先行するものの、30年度は燃料電池車(FCV)や駆動用が中心になると予想する。駆動用については、各国の普及政策に伴い、フォークリフトやバスの需要増加を見込むほか、FCVは量産化技術の確立やインフラ整備の普及が市場拡大を後押しするとみる。

同社は19年8月から20年1月まで、燃料電池の世界市場をFCV、駆動用、産業・業務用、家庭用など用途分野別、タイプ別、需要エリア別に調査を行った。その結果を踏まえた市場予測を、「2019年版燃料電池関連技術・市場の将来展望」にまとめた。

この調査によれば、18年度の燃料電池の市場は、産業・業務用が堅調に推移したのに加え、駆動用が大きく伸びたことで前年度比12・0%増となった。FCVは現代自動車の「NEXO」が発売されたことで韓国では大きく伸びたが、日本や北米が低調だったため、微増にとどまった。

19年度の市場は、定置用の構成比が高いものの、FCVや駆動用が大きく伸長し、前年度比で27・1%増の2513億円になると推測する。FCVは各地域で伸びているが、同社はさらなる普及にはインフラ整備が必要としている。

駆動用については、FCフォークリフトに続いて、FCバスやFCトラック・商用車の市場も本格的に立ち上がりつつあるとする。特に中国ではFCバスの普及が急速に進み、また北米や欧州でも今後数年で1000台以上を運行する計画があるという。

25年度以降は、燃料電池の市場がさらに大幅に拡大するとみる。主要各国では、25年度または30年度以降の推進目標をまとめた普及ロードマップを作成している。エネルギーの多様化や低炭素社会を実現するキーデバイスとなる燃料電池の普及促進を図っていく方針だ。

また、25年度頃からの市場拡大で燃料電池コストの低減が想定されるため、補助金に依存しない市場の自立化が進むと踏む。

30年度以降は、各国の長期的な普及推進政策が市場の成長を後押しするとの予測だ。FCVはゼロエミッション化を実現する有力な手段として認識されているため、各国の長期的な普及政策に組み込まれると予測。この上で、30年度はFCVや駆動用が市場の中心になるとみるが、産業・業務用や家庭用も堅調な伸びを想定する。

同社はFCV市場について、30年度に18年度比89・8倍の1兆9031億円に拡大すると予測する。25年度以降、各自動車メーカーの量産技術・体制が確立され、政府の補助金や支援策から自立した市場が形成されるとする。水素ステーションの整備と稼働率・稼働時間の向上も並行して進行することで、ユーザーの利便性が高まり、需要が増える見込みだ。

30年度までに、日本では80万台、韓国は85万台、中国は商用車も含めて100万台、米国(カリフォルニア州)は100万台の累積導入を目指している。30年度時点での自動車市場におけるFCVの構成比は1%に満たないものの、今後はコストダウンや水素インフラの整備とともに加速度的に市場が拡大するとみる。

フォークリフトやバス、トラック・商用車など駆動体・移動体で使用される燃料電池の市場は、2030年度予測で18年度比38・4倍の1兆5392億円になると見込む。

現状は北米を中心としたフォークリフト、中国を中心としたバス、トラック・商用車の需要が大部分を占めるが、今後は鉄道や船舶、スクーターでの採用も増える。各国では、さまざまな駆動体・移動体で普及、導入計画が策定されていることから、今後の市場拡大を確実視する。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞6月4日掲載