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自動車産業インフォメーション

2020年6月4日

広がるか、新車オンライン商談 トヨタ参入

インターネットを駆使した新車販売の仕組みづくりが国内でも本格化する。トヨタ自動車は5月28日、顧客向けサイト「マイトヨタ」にオンライン商談機能を追加し、系列ディーラーでの運用を始めた。コロナ禍でロックダウン(都市封鎖)が行われた海外ではオンライン販売への関心が急速に高まりつつある。国内では登録制度もあり完全オンライン化は難しいが、トヨタの参入や消費者意識の変化などを背景に部分的なオンライン化が進む可能性もある。

自動車各社は今でもウェブサイトで新車の見積もり額などを示しているが、あくまで概算にとどまり、商談は店舗に出向く必要があった。トヨタが追加した機能は、割賦手数料や販売店独自のオプションなどを含め、店頭と同じ見積もり額をウェブ上で示すほか、その後は値引きなどを含めた商談もウェブ上でやりとりし、最終契約のみ店舗で済ませるもの。トヨタは順次、機能を拡充しながら全国の販社に利用を促していく。

コロナ禍で、多くの国が外出や店舗営業の制限に踏み切った海外ではオンライン販売が注目されている。スバルの中村知美社長は19日の会見で、米国を念頭に「(オンラインによる)売り方を活用して販売への影響を最小限に抑えたい」と言明。マツダの梅下隆一執行役員も「われわれの考え方だけでなく、お客さまの価値観としても(オンライン販売が)今後普及していくと感じている」と決算会見で語った。

一方で、もともと訪問営業から始まり、テリトリー制度が堅持されている日本で新車のオンライン販売は異端視されてきた。約20年前に「カーポイント」「オートバイテル」の米大手仲介業者が参入したが、思うように加盟ディーラーを集められず不発。業販ルートで仕入れた新車を全国にネット販売する国内企業も同時期に注目を浴びたが、数年後に経営破綻した。

今回は、自動車メーカー主導で仕組みを構築した点がこれまでの動きと異なる。一方の販売店側も、コロナ禍によって従来型の営業活動が難しくなっており関心を示しているという。一部では、独自にビデオ通話を活用した商談システムを導入したり、自宅にスタッフと車両が出向く「出前試乗」を始める動きも出ている。

第2波、第3波の到来が予測されるなど新型コロナへの対応は長期化の公算が大きい。暮らしや仕事のあり方とともに、自動車業界の商習慣も変化を迫られそうだ。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞6月1日掲載