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2020年5月13日

日刊自連載「軽自動車の使用実態調査報告書」(4)存在意義の変化

家の玄関から目的地まで自由に移動でき、経済性にも優れる軽自動車は、公共交通機関が限られる地方部を中心に人々の日常生活に欠かせない存在となっている。一方、地域の移動課題を解決しようとシェアリングサービスの拡充や自動運転実証など、官民一体となった取り組みが全国的に進んでいる。今後新サービスの認知度が高まり、利用意向が変化すれば、軽自動車の存在意義も変化する可能性がある。

軽自動車は人口密度が低い地域ほど保有率が高い。日本自動車工業会(自工会、豊田章男会長)が高密度(4千人/平方㌔㍍以上)から低密度(500人/平方㌔㍍未満)まで4つの人口密度別に軽自動車の保有率を調べたところ、低密度地域での軽乗用系の比率は42%、軽トラックは62%で、地方部ほど軽自動車の保有率が高いことを示した。

人口密度が低い地域ほど公共交通機関が不便に感じる人が多く、自家用車への依存度が増す。低密度地域では最寄りの鉄道駅やバス停までの距離が長くなりがちで、運行本数も少ないことから、58%の人が公共交通機関に対して不便さを感じているという。このため普段の通勤・通学や買い物の交通手段では、低中密度~低密度地域では自分で車を運転する人が約9割にのぼり、車が日常の足になっている。

軽ユーザーの4割をシニア層が占める。人口密度の低い地域ほど60歳以上の比率が高まり、低密度地域では43%占める。また、世帯年収では都心部の中央値578万円に対し、低密度地域は460万円と差がある。車での移動が多い地方部では、運転や保有にかかる費用への不安から経済性などに優れた軽自動車を選択する人が多いことが分かる。

軽自動車が日常生活にとって不可欠な存在であることは、地方部に限ったことではない。軽自動車がなくなった場合の困窮度を見てみると、高密度地域では79%の人が困ると感じている。地方部に行くほどこの比率は高くなり、低密度地域は8割以上に上る。「経済的な負担が増し車を保有できなくなる」といった経済的な理由や「狭い道など道路条件の関係で、行動範囲が狭まる」といったサイズ面からも、普通乗用車に対する軽の優位性がうかがえる。

最近では、人口減少や少子高齢化の進展に伴う地方の移動の悩みを解決する取り組みが全国で官民一体となって進んでいる。政府主導による自動運転技術を活用した交通手段の空白地をカバーするラストマイル実証に加え、民間企業が中心となってデマンド型交通やシェアリングなどを取り入れたMaaS(サービスとしてのモビリティ)の取り組みが活発になってきている。

軽乗用系所有者に対し、新サービスの認知度を尋ねたところ、カーシェアは9割を超えたが利用意向は2割程度にとどまる。個人間シェアの認知度は3割強%、ライドシェアは26%で、利用意向はそれぞれ約2割。各サービスとも40代以下で利用意向が高いものの、普通乗用車保有者に比べ軽乗用系の利用意向が低い。

ただ、カーシェアの利用検討者のうち、45%が保有に影響があると回答した。現状、地方部での新サービスの利用意向は低いが、全国的に浸透してくれば、人々の車に対する意識が変わり、軽自動車の存在意義も変化することが予想される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月2日掲載