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2020年5月12日

トヨタ、全車種併売スタート シェア維持に知恵絞る

トヨタ自動車は8日、全店舗全車種併売をスタートさせた。販売系列の4チャンネルは維持するものの、これまで「聖域」とされてきた専売車種を廃止することで、各販社は合理化を加速するとともに新サービスを模索するなど販売改革を急ぐ。

一方、併売とチャンネル統合を先行した日産自動車は20年前に比べて新車拠点数が3割減少し、ホンダは拠点数こそ維持するものの法人数は約4割減った。トヨタにおいても併売を機に企業や店舗の再編が一気に進むとみられるが、登録車市場で半数近い市場占拠率を併売後も維持できるかが焦点となる。

新型コロナウイルス感染拡大に伴い緊急事態宣言が延長された中、全国の販売店は静かに併売を開始した。当初、メーカーは2022~25年をめどに車種数を減らしながら併売へと移行する計画だったが、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表される自動車産業の環境変化で、併売を前倒しした格好だ。

国内の新車市場の縮小も、併売を後押しする。1990年の777万台をピークに90年代は700万台弱、2000年代は600万台弱、11年はリーマンショックで400万台前半まで落ち込んだが10年代はおおよそ500万台前後で推移しており、新車需要は徐々に減少している。

日産はバブル崩壊後、国内販売が600万台を切った1999年に当時5系列あった「日産」「モーター」「サティオ」「プリンス」「チェリー」を、「レッド」と「ブルー」の2系列に集約。その後、販社の再編が進んだが2005年までは約3千の店舗網を維持してきた。ただ、05年にレッドとブルーで全車種併売となり、拠点網の統廃合が進み2千店舗程度に縮小した。

ホンダは06年に「クリオ」「ベルノ」「プリモ」の3チャンネルを廃止し「ホンダカーズ」に一本化した。トヨタや日産と異なり、ホンダは1法人1拠点の“シングルポイントディーラー”が旧プリモ店に多いのが特徴だ。販売系列の廃止で販社の再編が一気に進んだが、それでも法人数は19年で675社とトヨタや日産と比べて圧倒的に多く、新車拠点数は併売後でも2千拠点程度を維持している。

トヨタは04年に「ビスタ」を「ネッツ」と一本化したことで販社統合や拠点統廃合が進んだが、05年に高級ブランドの「レクサス」を立ち上げたことで国内新車店舗は5千拠点程度で推移している。法人数は徐々に減少しているが、併売を機に一気に再編が進む見通しだ。全国に先駆けて併売をスタートさせた東京都のメーカー直営4社が19年4月に統合。地場系列では神奈川トヨタを中核とするKTグループが5月の併売と同時に一社化するなど、他の有力販社もグループ内の販社統合を表明している。

併売移行と販社統合が進む中でも、トヨタは拠点数の維持にこだわる。初めて併売への移行を発表した18年11月には国内拠点網をフル活用して国内販売150万台を維持する方針を示した。

また、レンタリース店約1千拠点も加えた全国6千拠点のネットワークを生かして、地域の困りごとを解決する「生活サービス業」の展開も視野に入れる。各販売店は併売化によって既存ビジネスの強化を図るとともに、新サービスを実現する拠点の活用法も模索していくことになる。

 

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞5月9日掲載