2020年4月15日
日刊自連載「コロナ禍 採用最前線」㊦「ウェブ採用、効率化との狭間で」
コロナ禍の影響で、多くの部品サプライヤーが採用説明会や面接をオンラインに切り替えている。中止となった合同説明会や就活イベントの代替策としてのウェブの活用だが、ウェブ採用のメリットが部分的に浮き彫りになる半面、採用活動のどの段階までウェブに頼れるのかについて不透明感が漂っており、今後も各社の試行錯誤が続きそうだ。
2021年卒の学生を対象とした採用活動では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、都市部を中心に大型イベントの開催や移動の自粛を要請されたことで、就活イベントや各社採用説明会の開催が困難となり、企業、学生とも混迷を極めている。
移動自粛要請で、企業の採用活動はインターネットを利用したネット面談に全面的に移行しつつある。「従来、遠方の学生向けに導入していたウェブ会社説明会のPRを強化した」(アルプスアルパイン)、「今年からウェブ面接を導入し学生の移動負担軽減につなげている」(JVCケンウッド)など、コロナ禍を契機とした採用選考でのウェブ活用への転換が急速に進んでいる。
実際にウェブ採用に踏み切った企業からは、「地方在住の学生が参加しやすくなった」(ミネベアミツミ)、「海外を含む遠隔地在住学生との接点が持ちやすい」(森六ホールディングス)など、ウェブ説明会・面接の手法に前向きな反応を示している企業が少なくない。
テイ・エス テックによると「ウェブ面接の導入で、面接の予約数に対する参加率が100%で推移し、前年より参加率の上昇が見られる」という。本来、約束していた日時に訪問することは社会人を目指す立場として当然だが、早期に内定を獲得した学生や企業とのミスマッチを覚えた学生が、それまで進めていた企業の選考過程で連絡もせず辞退するケースは少なくない。
企業にとっても採用活動の効率化という面で、ウェブ活用が大いに役に立っていることは確かなようだ。ただ、ウェブ活用のメリットは、従来の対面方式のメリットとのトレードオフにあることも忘れてはならない。効率化で学生と直接接する機会が減少すれば、採用側と学生側双方の理解度が低下する可能性は否定できない。
例えば、就活生は企業を複数回訪問する過程で、多くの情報を手に入れようとする。オフィスの雰囲気や対応した社員の印象がその企業の評価を大きく左右する。採用側も、実際に対面することで学生の人柄や礼儀作法などを判断する。ウェブ説明会・面接では、それらのイメージを膨らませづらい。
実際に、採用活動のどのステップまでをウェブ対応にするのかについては、各社で定まっていない状況だ。「すでに実施している面接についてはウェブ対応としているが、最終面接までウェブで実施するかは検討中だ」(旭化成)、「最終面接までウェブで実施するかは分からない」(アルプスアルパイン)など、見通しは不透明だ。
採用効率化の代償として、学生と企業側の双方の間にギャップが生まれれば、内定辞退や早期の退職につながるリスクがある。
ミネベアミツミは「学生と直接会う機会が減っている分、新型コロナウイルスの影響が落ち着いたら、対面式の内定者フォローに力を入れたい」と対応策を練る。ミスマッチや学生の不安を取り除くには、従来型の対面でのコミュニケーションが効果的との見方だ。今後各社とも、ウェブ活用と対面式手法を組み合わせながら、バランスを考慮した新たな選考方法を模索する必要がありそうだ。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
---|---|
対象者 | 大学・専門学校,自動車業界 |
日刊自動車新聞4月10日掲載