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自動車産業インフォメーション

2020年4月2日

自動車メーカーと通信、広がる提携の輪 モビリティサービスの主導権争い

クルマの自動化や共有化に欠かせない通信技術の開発をめぐり、自動車メーカーと通信会社の協業が加速している。クルマと外部がインターネットを介してつながるコネクテッドカーの普及が本格化する中、各社は通信会社と手を組み車車間・路車間通信やビッグデータの活用などの実証実験を進めている。

一方、トヨタ自動車はKDDI、日産自動車はNTTドコモ、ホンダはソフトバンクとある程度固まっていた協業陣営は、トヨタが、ソフトバンクと立ち上げたモネ・テクノロジーズをはじめNTTと資本提携を結ぶなど提携の輪を広げ、陣営が崩れつつある。業界をまたいだ合従連衡で、次世代モビリティサービスの主導権争いは激しさを増しそうだ。

トヨタは、通信業界とも〝全方位〟で向き合う。もともと縁深いのはKDDIだ。電気通信分野の自由化が始まった1980年代から国際通信や国内長距離、移動体通信の各分野で新会社の立ち上げに関わった。現在、京セラに次ぐ筆頭株主(出資比率12・67%)であるKDDIとの関係も、トヨタが出資した日本高速通信(TWJ)、日本移動通信(IDO)の事業再編に伴うものだ。

他の2社と組んだのはごく最近だ。NTTグループとは2017年に次世代コネクテッドカー向けプラットフォームの研究を開始。翌18年にはソフトバンクと提携して業界内外を驚かせた。同社と共同出資したモネ・テクノロジーズでは、MaaS(サービスとしてのモビリティ)のプラットフォーム確立を目指している。24日にはNTTとの資本・業務提携を公表。「スマートシティ」に必要なデジタル情報基盤を共同で開発する。

日産はNTTドコモと手を組み、さまざまな実証実験を行ってきた。18年にはNTTドコモを含めた6社で、クルマや人などさまざまなものを通信でつなぐ「セルラーV2X」の実証実験を国内で初成功させた。19年には第5世代移動通信方式(5G)を用いて、遠隔地にいる人の分身(アバター)と対話できる技術「インビジブル・トゥ・ビジブル(I2V)」の実証実験を開始。アバターを通じて遠隔地から乗員に観光案内などを行うサービスを、25年頃に実用化する方針だ。

両社は市販車への搭載技術でも協業している。19年7月の大幅改良でコネクテッドカーとなった「スカイライン」で、インターネット接続サービス「ドコモインカーコネクト」を初採用した。車載通信機を介し、車内でWi―Fiが利用できるようにした。

ホンダは、ソフトバンクと5Gを使ったコネクテッドカー技術の分野で協業を深めている。5Gを活用したサービスの研究開発に取り組むソフトバンクの知見を生かし、つながるクルマの価値向上を狙う。本田技術研究所とソフトバンクは、18年度から同研究所の鷹栖プルービンググラウンド(北海道鷹栖町)に5Gの実験用基地局を設置し、世界初となる5G対応のコネクテッドカーの検証環境を整え、共同研究に着手した。

5Gは、4Gに比べて通信速度が速い半面、電波の届く範囲が狭いという弱点がある。高速で移動する自動車に対して、通信基地局を安定的に切り替える技術をはじめ、さまざまなケースを設定して技術開発を実施。多様な条件下でも安定した通信が行えることを確認し、19年11月にこの技術検証を完了した。

このほか、ホンダが2月に発売した新型「フィット」で初採用した「ホンダコネクト」についても、車載機の通信と外部との通信にソフトバンクの無線通信を利用する。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞3月30日掲載