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2020年3月26日

タイヤメーカー各社、デジタル技術の活用積極化 メンテや運転支援に生かす

タイヤメーカー各社がCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリング・電動化)を見据えたデジタル技術の活用を積極化している。走行中のタイヤデータをリアルタイムで収集し、メンテナンスや安全運転支援に生かす方針。ドライバーが必要ない完全自動運転下ではタイヤの点検機会が減るほか、シェアリングにより新車販売台数は減少し、タイヤの販売にも響いてくることが見込まれる。従来の売り切り型から、販売後も顧客と関われる形にビジネスモデルの転換を図ることで、新しい付加価値を模索する。

「今後のビジネスは、ソリューションなしでは成り立たなくなる」。ブリヂストンの津谷正明CEO兼会長は2019年末の記者会見でテレマティクス技術を活用したフリートサービスの展望についてこう言及した。昨春にオランダのトムトムテレマティクスを買収し、約100万台の走行データを管理している。昨年12月には走行中のタイヤのひずみから摩耗状態を推定する技術も確立。タイヤに取り付けたセンサーを通してリアルタイムで荷重と摩耗情報を集める。同社は運送事業者向けにすでにタイヤの運行管理サービスを展開しており、まずはフリートの領域で活用を見込む。

横浜ゴムはアルプスアルパインと乗用車用タイヤセンサーの開発を始めた。空気圧や摩耗・路面検知などタイヤの状態把握を行える仕様にする。センシングデバイスの知見が深いアルプスアルパインと協業することで、センサーとしての新しいタイヤの可能性を探る。

トーヨータイヤもタイヤに装着したセンサーから得た情報を人工知能(AI)で分析し、グリップ力を推定する技術を開発した。将来的には、収集した分析データを地図データや天候情報と組み合わせ、ドライバーへの減速警告など安全運転支援の面でも活用を狙う。

群馬大学などと協業を進める住友ゴム工業は、センサーで収集した空気圧などのデータを、将来的にスマートフォン上などで確認できる形も検討している。独コンチネンタルタイヤは、状態管理サービス「コンチコネクト」を開始。センサーが空気圧の減少を検知した場合、遠心力で空気を自動注入するなど、人の手を極力必要としないメンテナンスサービスとした。シェアカーやロボットタクシーでの採用をにらむ。

「センサーを活用したデータソリューションサービス」。各社とも目指す方向性は同じだ。一方で「どう利益につながっていくかがまだ見えてこない。これまでは必要がなかったコストの支払いに関して、顧客に理解してもらえるか分からない」(タイヤメーカー開発者)など、ビジネスとして成立するにはまだ未成熟な領域でもある。

住友ゴムの山本悟社長は「車と人の関わりや車自体の価値観が変わり、タイヤに求められる価値を再定義する必要がある」とし、タイヤメーカーの在り方にも変化は避けられないと指摘する。センシングサービスをいち早く事業として昇華できるかが、既存のタイヤメーカーから脱却できるかを左右する。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 自動車業界

日刊自動車新聞3月23日掲載