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2020年2月19日

期待の量販小型車 目標は「控え目」

国内市場の先行き不透明感が、量販の期待を背負う新型車の月販目標台数に表れている。先代の発表時と比べて、トヨタ自動車「ヤリス」(旧ヴィッツ)は2200台減の7800台、ホンダ「フィット」は5千台減の1万台となった。ともに自社初の新機能などを余すことなく新型車に採用して商品力の強化をアピールするが、策定した月販目標台数は手堅い。小型乗用車市場の縮小や軽自動車の販売増加に加え、消費者ニーズの変化が背景にある。消費税増税に伴う需要の減退もマイナス影響の1つに挙げられる。

トヨタ「ヤリス」は10日に、ホンダ「フィット」は14日に全面改良して相次ぎ発売した。両社にとって国内販売を支える重要車種で、保有台数も多く抱える。ホンダではフィットが最も保有台数が多く、代替の源泉としての最重要モデルに位置づける。

両社の系列販売会社も新型車の増販にかける意気込みは強く、両陣営から受注状況は「好調」との声が聞かれる。ホンダでは、電動パーキングブレーキの不具合で発売日を従来予定の2019年10月から延期した影響が懸念されたが、11日までの受注台数は約1万7千台と堅調に台数を積み重ねているようだ。

「フィットユーザーから『フィットでこういったのが出るんだ』との意外性がうけている」(ホンダカーズ販売店関係者)というように、5つのタイプの中でもSUVテイストの「クロスター」が好評という。一方、ヤリスについてネッツトヨタ店の関係者は「ヴィッツや『アクア』からの代替が多いが、輸入車からの代替もみられる」と新規客の獲得に期待を寄せる。

ただ、トヨタとホンダによる新型車投入効果をもって、20年度の小型乗用車市場が拡大に転じるかは現時点で未知数だ。

トヨタは当初、4月までのネッツ店専売期間中のヤリスの受注目標を6万台と計画していたが、最終的には市場見通しなどを踏まえて半分の3万台に引き下げた。計画修正の背景には「(19年に全面改良した)クラウンとカローラの伸び悩みがあるのでは」と指摘する声もある。

トヨタの20年暦年国内販売計画は、前年実績見込み比で約4%減の156万台(レクサス、軽自動車を含む)。うち登録車は153万台。「5月の全車種併売化で販売台数も増加と単純にはいかない」と、ある販社の代表者は話す。

「一升マスには一升しか入らないとは言いえて妙」。ホンダの関係者は自虐的にこう話す。先代フィットは13年9月に発売し、13年度の販売台数は21万7100台だった。ただ、度重なるリコールの影響や「N―BOX」の販売増加に伴い、フィットの販売台数は減少。国内販売の総量では大きく増えていない。「N-BOXに代替した元フィットユーザーを新型で再び取り戻すことは容易ではない」と自社代替の難しさを打ち明ける。

18年度の乗用車(普通車・小型車)販売台数は、287万7741台。うち小型乗用車は129万7740台で、10年前と比べて約10万台減少した。一方で、軽乗用車は約28万台増加している。ただ、好調な軽乗用車でも消費者ニーズの変化は影響が大きく、スズキは19年12月に一部仕様変更した「ワゴンR」の月販目標台数を1万台とし、17年2月の全面改良時と比べて6千台減少させた。全需の拡大が見込めない中、新型車の投入効果による市場の活性化や規模拡大は曲がり角を迎えており、保有客を守ることが主眼となりつつある。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月15日掲載