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2020年2月6日

熊本県の路線バス5社 全国初、共同経営へ

熊本県内のバス事業5社は1月27日、熊本市を中心とする熊本都市圏での路線バス事業を共同経営することで合意した。系列を超えた複数のバス事業者による共同経営は全国初の事例となる。近年輸送人員が伸びて経営が好調な大都市部に比べ、地方の事業者の多くは乗客減少と運転手不足の結果、慢性的な赤字体質に苦しむ。今回の熊本の取り組みは、単独での生き残りが難しくなりつつある地方の事業者だけではなく、地域交通維持の方法を探る自治体の注目も集めそうだ。

5社はいずれも同市に本社を置く熊本都市バス、九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス。同県内でも路線バス乗客数は年々減少、特に2016年度は熊本地震による落ち込みが大きく、現在も回復していない。5社の運転手は18年度末で定員を45人下回る899人で、10年後には149人減少する見込みを立てている。

現状通り5社が独自サービスを続けた場合、自社都合で路線の廃止・減便を行うことになり、バスサービスの低下・ネットワークの崩壊に至る恐れがあるとしている。このため5社は、県と市も加わった「バス交通のあり方検討会」を昨年3月から5回開き、議論を進めてきた。

検討結果によると今後の方向性として、バス路線網を将来にわたり維持し、会社の垣根を越えて路線再編などの取り組みを実施する▽「共同経営型」の事業形態へ移行することを前提に「共同経営準備室」を設置する▽利用促進策(共通定期券など)の実施や路線バス事業に関するデータ公表を行う―としている。

複数のバス会社が路線調整などを行う共同経営型は独占禁止法で認められていない。しかし、国は地域交通維持のために同法の適用緩和を行う方針を固めている。5社と県市は国会での特例法成立後を見据え、4月に共同経営準備室を熊本都市バス内に設置し、今年度中に利用促進策とデータ公表、共同経営計画の策定・認定申請を行う。

バスサービスは、共同経営準備室を発展させた「共同経営推進室」が各社の運行計画を取りまとめて行う。具体的な取り組みとして、複数事業者による路線重複区間で運行事業者を1社に絞ることや、需要が見込めない区間では乗り合いタクシーや自家用有償運送などに転換すること、共通定期券・乗り継ぎ割引・均一運賃を検討すること、5社の垣根にとらわれない運転手と車両の配置を行うことなどを想定している。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
対象者 一般,自動車業界

日刊自動車新聞2月3日掲載