2020年2月3日
体調悪化の事故防止へ トラック・バス・タクシー事前検査を促す
国土交通省は、トラック、バス、タクシーの運転手や事業会社に対し、運転中の体調悪化による事故を防止するため、事前検査の受診を促す取り組みを強化する。約1200人のモニター運転者に対する脳検診の受診事業を行ったところ、健康に対する意識の向上や疾病を早期に発見し復帰につながる効果を確認した。一方、費用面の問題や受診結果に対する事業者側のケアには課題もあり今後も課題を深堀して事前検査の普及に向けた方策を練る。
事業用自動車の事故は減少傾向にある中、ドライバーの疾病により運転が継続できなくなり事故につながる件数が増加している。国交省によると、2018年の健康起因事故件数は363件と前年の298件から大幅に増えた。乗り合いバス、観光バス、トラックでは事故件数が右肩上がりで推移している。
事故の原因の大半は心筋梗塞・心不全といった心臓疾患や脳疾患が占める。国交省は心疾患と脳疾患に対するガイドラインを策定し、事前のスクリーニング検査を通じて早期発見を呼びかけている。
同省は、18年度にトラックやバスなど49事業者・1209人のモニターを選んで脳疾患の検査を受診してもらうモデル事業を開始した。受診料を負担する代わりに、受診結果やその後の治療の状況、事業者の対応などを3年間にわたって調査する。1年目の18年度では7人の運転者が「要治療」と診断され、事業者の対応や治療法、現在の状況に至るまで調べている。
モデル事業に参加する事業者に対してアンケート調査したところ、健康に対する意識の向上や受診の機会ができたこと、疾病の早期発見・早期復帰につながったことなどが効果として挙がった。
一方、課題として費用がかかるため多くの従業員を受診させることができないといったことや病院が遠く通わせにくい点などが分かった。ドライバーが受診結果を受けた後の事業者側の対応にも課題がある。受診結果によって、再検査まで非乗務扱いとしたり受診を推奨した会社がある一方、経過観察の場合、特に精密検査を受けさせるなどさらに踏み込んだ対応をとっていないところもあった。
国交省は、今後この1200人のドライバーに対しては追跡調査を行い、現在の治療状況や結果の内容について詳細に分析してスクリーニング検査の普及拡大に向けた手段の検討に活用する。
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
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対象者 | 自動車業界 |
日刊自動車新聞1月29日掲載