会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2020年1月21日

ホンダ郵便配達用「ベンリィe:」を納入 電動バイク市場の開拓へ一歩前進

ホンダは1月17日、日本郵便に郵便配達用電動バイクを納入した。ホンダは電動二輪車「PCXエレクトリック」を2018年に市場投入したが、価格が高いことや、航続距離が短いことから浸透していない。ホンダは主な走行ルートや1日当たりの走行距離がほぼ決まっている配達用で、電動バイクの需要を開拓して認知度を高めて一般向け販売につなげていく構えで、国内電動バイク市場の開拓に向けて着々と取り組みを進める。

ホンダと日本郵便は、郵便配達用電動二輪車の第1号を引き渡すのを記念して、新宿郵便局で納車式を行った。ホンダは昨年12月19日、ビジネス用電動二輪スクーター「ベンリィ e:」を法人向けに2020年4月に販売すると発表していた。郵便局に納車する電動二輪車は、ベンリィ e:をベースに、郵便配達用に荷物収納箱などを装着した。バッテリーは着脱式で、チューブレスタイヤを採用している。

ホンダと日本郵便は2017年3月に電動二輪車を郵便物の配送に活用する社会インフラ整備に向けて協力していくことで合意しており、約3年をかけて郵便配達用の電動バイクの開発に漕ぎ着けた。日本郵便では、2019年度に200台の供給を受ける予定で、まず新宿・日本橋・渋谷・上野の各郵便局で使用する。東京都をはじめとする首都圏の近距離輸送エリアにも配備する予定で、2020年度には国内の大都市にある郵便局に2000台程度を導入する予定。都内の郵便配達用二輪車は約1万5000台のうち、計画通り電動二輪車を導入すると2020年度末には2割が電動二輪車となる予定だ。

郵便配達用のバイクは、都内中心部だと1日20~30kmを走行する。郵便配達用バイクのスペックはベンリィ e:とほぼ同じで、1充電当たりの航続距離は原付1種タイプが87km、原付2種タイプが43kmとなっている。バッテリーが不足している場合は、充電器を備える郵便局の拠点で、フル充電のバッテリーに交換するだけですぐに乗り続けることができる。

電動二輪車市場は、交換バッテリーのステーションも整備している台湾で電動スクーターを手がけるGogoro(ゴゴロ)が販売を伸ばしており、2019年の台湾での販売台数は約14万6000台となった。出遅れ感のある日系二輪車も今後、日本市場に電動バイクの投入を本格化させる見通しだ。

ホンダが日本郵便に納入する郵便配達用電動二輪車の価格は非公表だが、ベースのベンリィ e:が73万7000円からで、ガソリンエンジンの配達用二輪車と比べて3倍近い。高い価格に加え、航続距離が短く、充電に時間がかかることなどが電動二輪車普及の障害となっている。

ホンダでは、バッテリー残量がなくなっても交換するだけで乗り続けることができる着脱式バッテリーの電動二輪車で、環境対応を迫られている法人向けなら需要が見込めると見ている。特に今回の郵便配達用のように走行する範囲やルート、1日に走行する距離がある程度決まっている場合、電動バイクの不便さは解消できるためだ。電動バイクは「ランニングコストをガソリン車の半分くらいにできる」(日本郵便)メリットもあり、ホンダは電動バイク市場の開拓では法人向けに注力する構え。

また、ホンダの二輪事業本部長である安部典明常務執行役員は「(電動二輪車なら)ガソリンスタンドが減っている地方で、遠くに給油に行かなくてもいいので、新たな展開も考えられる」と、電動二輪車市場の拡大に期待を示す。

ホンダ、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業の日系二輪車4社は電動バイクの交換式バッテリーの規格を統一することで合意している。各社が統一規格バッテリーを搭載した電動二輪車を市場投入して、交換用バッテリーステーションが整備されると、日本で電動二輪車市場が本格化する可能性もある。日本郵便は電動バイクの導入に加え、郵便局を交換用バッテリーステーションにすることも視野に入れる。国内電動バイク市場の動向が注目される。

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞まとめ

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月18日掲載