自動車産業インフォメーション

日刊自連載「部品・素材 展望2020」(下)素材

2020年1月14日

素材は自動車部品の性能を大きく左右する。電動車など次世代車向けに軽量、高剛性、耐熱、耐薬品など、従来以上に高機能な材料開発を要求される素材業界では、デジタル技術の導入による研究開発スピードの大幅な向上に加え、素材のライフサイクルにおける持続可能性の確立が今後本格的に求められるようになる。高効率な開発と素材の省エネ、リサイクル性能の高さがグローバル競争力の要となる時代の到来に向け、素材メーカー各社は先手を打ち始めている。

グローバルでの次世代車開発競争が加速する中、素材メーカー各社は開発効率の向上に加え、データ解析による品質改善や予兆保全に本格的に着手し始めた。

研究開発の効率化については、次世代車で需要が高まる高機能材の開発期間の短縮に向け、デジタル技術を駆使して触媒の化学反応時間を大幅に短縮するなど、人工知能(AI)を活用したマテリアルズ・インフォマティクスの手法の本格的採用に着手する動きが素材メーカー各社で加速している。

旭化成は研究開発などにおけるAIの積極活用を重視し、データサイエンティストやデータエンジニアなどデジタル領域のプロフェッショナルを2021年度末までに150人育成する。同様の人材育成策は日本製鉄やJFEスチール、AGCなども注力しており、開発、製造、業務プロセス全般における各種データの本格活用を目指している。また富士通は、高まる高機能材需要に対応して、材料開発におけるAIの高度利用を目指し、多様な材料に対して適用可能なマテリアルズ・インフォマティクス技術の確立を進めている。

一方で、素材の機能性に加えて、材料としてのライフサイクルも着目され始めている。「欧州の自動車メーカーは素材のリサイクル性能の高さを要求し始めており、今後は素材のライフサイクルの視点が入札でも不可欠になるだろう」(国内大手化学メーカー幹部)。欧州の自動車メーカーはアルミ車体の開発でリサイクル材の活用を検討するなど取り組みが先行する。エンジニアリングプラスチックを主力とする蘭DSMは、30年までに既存のエンプラ全製品ラインアップにバイオベースやリサイクルベースの素材を利用した製品を導入すると昨年明らかにした。

欧州を起点に今後加速しそうな素材の持続可能性の確立の流れを受け、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は昨年11月、樹脂やアルミニウムの高度な資源循環(リサイクル)に向けた技術開発方針を発表した。素材の高精度な分離・プロセスを確立し、ヴァージン材に匹敵する良質な素材へのリサイクルの実現を目指す。産学官の連携による研究体制を構築し、特に自動車分野では、車体の軽量化に向けて採用拡大が見込まれるアルミ展伸材へのリサイクル材適用の本格化を目指すとしている。

一方で環境省は20年度から、植物由来の軽量素材のセルロースナノファイバー(CNF)など、省エネに貢献する素材の生産設備の導入支援を始める。民間企業によるCNFや窒化ガリウム向けの設備投資を対象とし、設備導入の2分の1を補助する。

今後、官民が一体となって素材のライフサイクルなど資源循環に本腰を入れることで、中長期的な視点での国内企業のグローバル競争力の強化が期待される。

 

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞まとめ

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月10日掲載

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