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2020年1月14日

日刊自連載「部品・素材 展望2020」(中)自動運転と5G

2020年は自動運転技術に加えて、商用化に向けた周辺サービスの開発も活発化しそうだ。自動化ではメーカー10社と産官学で推進する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)による大規模な実証実験が夏に控える。周辺サービスでは大学やベンチャー企業などが自動運転バスの年内での商用化を見据えて開発や研究を進めている。自動運転車に触れる機会も増加し、自動運転の実用化に向けた機運も高まりそうだ。

ドライバーレスを想定した自動運転の社会実装では、走行地域を限定するレベル4相当の技術の路線バスなどへの導入が先行しそうだ。群馬大学や埼玉工業大学、ソフトバンクグループのSBドライブ(佐治友基社長兼CEO、東京都港区)などが、数年にわたってレベル2相当の自動運転バスで実証実験を重ねており、早いところでは20年内にも実現を目指している。

路線バスなどへの社会実装の先行が想定されるのは、地域を限定するところにある。群馬大の次世代モビリティ社会実装研究センター(CRANTS)の小木津武樹副センター長は「全国に信号機は約20万基あるが、既定路線の数十基を認識させるだけなら非常に簡素化できる」とし、高度自動運転の中でも技術的なレベルを下げて実現できる。ドライバー不足などが課題となる分野だけに社会的な需要も高く、実現の可能性は高そうだ。

ただ、自動運転車の商用化には自動運転技術だけでは実現が難しい。ドライバーレスになると乗務員が担っていた業務ができなくなるためだ。そのため、自動運転車の周辺サービスの開発が活発化することが予測される。すでにCRANTSと住友ゴム工業が共同で、自動運転車に対応したタイヤ周辺サービスの研究を進めている。ドライバーレスでも遠隔でタイヤ空気圧を監視し、パンクなどのトラブルの予防安全やトラブル発生時のサービス体制の構築に乗り出している。

また、SBドライブは人工知能(AI)を活用した遠隔監視などが可能な運行管理システムを開発しており、遠隔監視室とつないで乗客の安全確保や時刻表に基づいた発進の自動化に取り組んでいる。今後、よりパーソナルなモビリティサービスに近づくと、予約システムや乗客を認識するための技術などの実証も進むとみられる。

自動運転に関わるもう1つの技術として第5世代移動通信システム(5G)にも注目が集まる。5Gは通信各社が20年春の商用化を予定し、自動運転の実用化に向けたピースとして期待が高い。ドライバーレスになっても、交通状況次第では自律走行が難しいケースが出てくる。

そのため、5Gの高速・大容量、低遅延、同時多接続の特徴は遠隔操作による状況の回避に使用できる。遠隔操作室でのドライバー目線の映像の再現と操作のコマンドを低遅延で送受信できれば安全性は高まる。NTTドコモとヴァレオ、KDDIなどが実証実験を実施しており、商用化を契機にさらなる取り組みの活発化が期待できそうだ。

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主催者

日刊自動車新聞まとめ

対象者 自動車業界

日刊自動車新聞1月9日掲載