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2019年12月31日

〈回顧2019〉 ⑤カー用品 〝特需〟と〝変革の波〟が到来

2019年のカー用品業界は「特需」と次世代への「変革の波」が到来した1年となった。あおり運転や高齢者事故が社会問題化したことで、「ドライブレコーダー」「後付け踏み間違い時加速抑制装置」の需要が拡大。

カー用品店ではこれらの品薄な状態が続き、メーカーが増産対応に追われるというまさに「特需」が発生した。さらにDINサイズナビに代わるディスプレイオーディオ(DA)とコネクテッド機能を取り入れた市販カーナビゲーションが登場。CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)、MaaS(サービスとしてのモビリティ)時代の変革を象徴する商品となった。その一方で、既存の用品ビジネスの苦境が浮きぼりなった。

自動車用品小売業協会(小林喜夫巳会長、APARA)がまとめた19年4月~11月の用品売上高は、前年同期比6・0%増の2654億9372万円。品目別(既存店ベース)ではカーエレクトロニクスが好調で、8月に発生したあおり運転の事件報道に関連したドライブレコーダーのニーズ拡大が伸びを支えた。大手カー用品店では品切れや品薄状態が続き、9月のドライブレコーダー販売が前年同月比3倍に膨らんだチェーンがあったほか、今後も堅調な伸びが見込まれている。

アクセルとブレーキペダルを踏み間違えた際に不意な加速を抑制する後付け装置の需要も拡大した。今春、東京・東池袋の乗用車暴走事故をはじめ、高齢ドライバーの危険運転が相次ぎ、同装置への注目が高まった。東京都をはじめ地方自治体が購入補助制度を設けるとともに、「消費者意識の変化が装着を後押しした」(大手用品メーカー)とみている。

さらに国が19年度補正予算で〝サポカー〟や後付け装置の補助金交付を来年3月から受け付けることを決定した。高齢者の免許返納問題に関連した移動の足を確保する対策として、後付け装置の需要が続きそうだ。

今年のカー用品市場の変革を象徴するのがカーナビだ。とくにトヨタ自動車が新型「カローラ」から搭載を始めたDAは市販カーナビ業界を大きく揺るがした。後付けナビで主流のDIN規格商品が装着できず、大幅な需要減少が危惧されたからだ。

ナビメーカーにとっては、ディーラーオプション向けの販売減少にもつながる。それだけに今後も採用拡大が見込まれるDAは、まさに脅威となった。

ディーラーからも懸念の声が上がった。用品売り上げの大黒柱であるオプションナビを失うことは新車付帯収益の減少に直結するためだ。
ただ、車両価格や顧客ニーズを考慮してオプションナビを残す車種もある。当面はDAと既存ナビが共存することになりそうだ。

カーナビのコネクテッド化が進んだことも変革の事例。自動車メーカーのDAに続き、市販ナビではパイオニアが11月に定額で高速データ通信が行える「サイバーナビ」を発売。クルマのオンライン化を進める。
カーアクセサリーのコネクテッド化も進んだ。カーメイト(徳田勝社長、東京都豊島区)は、IoT(モノのインターネット)技術を活用してカー用品をコネクテッド化する車載ユニット「コネクテッドベース」を開発。第5世代移動通信システム(5G)の実用化を見据え、バッテリーやタイヤ空気圧センサーなどとの連携を検討している。

変革が進むカー用品業界で、既存ビジネスの苦境が鮮明になった1年でもあった。カーアクセサリーやベビー用品の製造、販売を手掛けていたナポレックスは9月、約11億1千万円の負債を抱え、中古車販売のA―Zに事業譲渡を決定した。

日刊自動車新聞12月28日掲載

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