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2019年12月31日

新型車相次ぐ来年、消費意欲喚起の起爆剤になるか

トヨタ ヤリス

ホンダ フィット

2020年は、主力量販車の全面改良や従来より性能の高い先進技術を搭載する新型車の投入が相次ぐ。足元の新車市場は、自然災害や消費税増税を背景に消費マインドが冷え込んでいるだけに、各社は新商品を起爆剤に巻き返しを図る構えだ。

量販車ではコンパクトカーやSUVの競争激化が想定されるほか、新型電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の発売も控えており、電動車の選択肢も広がりそうだ。

20年2月の発売を前にすでに激しい受注競争を展開しているのがトヨタ自動車「ヤリス」とホンダ「フィット」だ。発売までまだ1カ月半あるものの、ティザー広告や東京モーターショーでの展示といった事前の販促活動が奏功し、両車種もすでに年度内の受注枠は埋まっている模様だ。

フィットの発売延期で初売り商戦の目玉車種を失ったホンダ販売店は「実車は無いが、他の車種と比べると情報量はある。全国で2万台は売らないといけない車種」(東日本の販売店首脳)と刈り取りを急ぐ。さらに、16年に「eパワー」を設定してヒットした日産「ノート」もベース車は12年発売と古く、近く全面改良する可能性も高い。トヨタ・ホンダ・日産の新型ハッチバックが出揃えば、市場はさらに過熱しそうだ。

激戦区のクロスオーバーSUVもプレーヤーがまた増える。トヨタは「ヤリス」にSUV仕様を設定し、日産は販売が伸び悩んでいた「ジューク」に替わって「キックス」を投入する見通しだ。軽自動車ではスズキが1月に「ハスラー」を発売し、ダイハツ工業も新型軽クロスオーバー「タフト」を20年央に投入する。SUVの市場は盛り上がりが続きそうだ。

電動車では、トヨタが超小型EVや「RAV4」のPHVモデル、「ミライ」の全面改良を控えるほか、ホンダが初の量産車「ホンダe」を発売する。日産も発売時期は未定であるものの、SUVタイプの新型EV「アリア」を近く投入する方針だ。全面改良の時期に入る三菱自動車「アウトランダー」はPHVシステムも刷新し、EVモードの航続距離や走行性能を高める見通し。

ポルシェ「タイカン」やアウディ「e―トロン」の国内導入も控え、高級EVもラインアップが増える。国内乗用車販売に占める電動車の比率は3割超に拡大しているが、その95%はハイブリッド車。20年はEV、PHV、FCVの存在感を示す一年にもなるだろう。

さらに、20年に控える自動運転「レベル3」の解禁を踏まえ、これまで「レベル2」を高度化するにとどまっていた各社の動きにも注目される。システム側に運転の責任が生じるレベル3を実現するには少なくとも1千万円以上の車両になるとされ、現時点で市販化されたとしても販売規模は見込めない。それでも、実際に市販化されれば、自動車への注目度は高まり、市場の活性化や自動運転に対する社会受容性の形成につながるとみられる。

日刊自動車新聞12月28日掲載

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