会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2019年12月30日

日刊自連載「平成から令和へ 車業界振り返り」(4)広がる売り方改革

SOMPOとDeNAの共同 出資会社設立会見(2月28日)

2019年の国内市場は、新たなクルマの買い方に対する関心が広がった1年だった。新車販売ではトヨタ自動車が月定額制でクルマに乗れるサブスクリプションサービスに参入。従来、法人向けがメインだった自動車リースでも、個人をターゲットにした商品が伸長をみせている。

こうした新たな動きはこれまで、新車が軸となってきたが、今年は中古車市場にも波及が目立つようになった。「所有」から「使用」へとユーザーニーズがシフトしていく中で、これからの自動車流通の変革に向けた胎動が大きくなっている。

トヨタは3月、東京地区で新サービス「KINTO(キント)」をスタートした。車両価格に加え、整備や保険、税金などクルマの維持にかかる費用をまとめ、月々一定のコストで利用できるものだ。車種を固定したタイプと、上級ブランド「レクサス」車を半年ごとに乗り替えられるものの2種類を用意。7月から全国展開に乗り出しているほか、対象車種拡大を含め、矢継ぎ早に事業強化を進めている。

同社だけでなく、多くの自動車メーカーが今、国内販売のあり方を変えようと急いでいる。長年、国内事業の収益を支えてきた保有ビジネスが崩れる恐れが高まっているからだ。カーシェアリングに代表されるMaaS(サービスとしてのモビリティ)が浸透していけば、クルマを1つの移動手段としてとらえるユーザーが確実に増えていく。こうなれば、管理顧客の減少を招き、事業基盤にも影響する。このため、クルマを使うことを前提とした新たなクルマの価値を提供できなければ、時代に取り残され、異業種などに市場の主導権を奪われるとの危機感を強める。

MaaSの台頭に伴って、新たな合従連衡の動きにもつながっている。例えば、SOMPOホールディングスとディー・エヌ・エー(DeNA)は今年、個人間カーシェアに加え、個人リースを手がける共同出資会社を新設。SOMPOはさらに、駐車場シェア大手のスタートアップ企業も傘下に入れた。保険業界にとっても保有ビジネスの基盤が崩れれば、死活問題となる。このため、新サービスの開発・運営が得意な企業と積極的に手を結ぶことで、次代の国内市場をリードできる力を蓄えていく考えだ。2020年も業界全体で、こうした動きがさらに加速していくのは間違いない。

主に新車市場からスタートしてきた新たな流通改革は、確実に中古車市場にも拡大している。トヨタは新車向けのサブスクリプションサービスのノウハウを活用し、中古車版のトライアルを実施する方針を明らかにしている。異業種などからの新規参入が相次ぐ個人向け新車リースを手がける新興企業などでも、中古車まで間口を広げたサービスに乗り出すところも増えている。新車に比べ、安価でサービスを享受できる中古車は、一気にユーザーの支持を集める可能性もある。今後は流通業界の上流だけでなく、中流や下流を巻き込んだ取り組みが進んでいくのは確実だ。

一方、新たなサービスが乱立する中で、すでに撤退を決める企業も出始めている。次代の生き残りに向けた戦いが、これからも激化していくことは間違いなさそうだ。

日刊自動車新聞12月26日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社まとめ

対象者 自動車業界