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2019年12月28日

日刊自連載「平成から令和へ 車業界振り返り」(3)過渡期の部品メーカー

2019年の国内自動車部品業界は、国際政治や貿易問題、為替差損といった外部要因に振り回されて、利益率の大幅な低下を余儀なくされた。日本自動車部品工業会が12月に発表した2019年4~9月期の自動車部品工業の経営動向調査では、前年同期と比較した場合、全般的に売上高が減収に転じた上に、営業利益は日本会計基準の61社が前年同期比28・3%減、国際会計基準の14社が同20・3%減と減益幅が大幅に拡大した。19年度通期業績予想でも、上期の経営環境からの回復を見込みにくく、通期売上高は前年同期比で上期よりも厳しく見込む傾向にある。

今年の大きなトピックスは、米トランプ政権に端を発する米中貿易摩擦の影響による世界経済の減速だ。関税の影響や中国経済の低迷をはじめ、経済減速の影響による自動車販売台数減で自動車メーカーが減産し、部品各社はこの影響が直撃した。中国に限らず、インドや、タイなどASEAN(東南アジア諸国連合)が各国事情などで市場が低迷したのも部品各社の事業計画を狂わせた。ただ各社トップの見解では、大規模市場である中国やインドはいずれ必ず回復するとの見方が大方だ。ただ生産工場新設に関しては、自前主義からリース方式へ計画を変更するなど、投資の手法でリスクヘッジを講じるケースが増えている。

固定費削減の自助努力が外部環境の変化に追いつかない現状で、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)といった次世代技術に対応した先行開発費の増加に歯止めがかからない。今後ニーズが高まる統合制御やシステム提案にはソフトウエア開発が不可欠で、この領域の開発コストは当面増加の一途をたどる。メガサプライヤーの場合は、自動車メーカーに対して一定の提案力を保てるため、開発費削減に取り組む余地があるものの、大半の部品メーカーは開発領域で効率的に成果を挙げるのがたやすくない。

この現状を踏まえ、国内部品メーカーが系列の枠を超えた合従連衡に本格的に動き出したのが今年の大きな特徴だ。トヨタ系部品メーカー4社が自動運転制御ソフトの合弁会社を立ち上げたほか、今春には仏フォルシアによるクラリオン買収やミネベアミツミによるユーシン子会社化、カルソニックカンセイとマニエッティマレリの統合など枚挙に暇がない。10月末には日立系とホンダ系サプライヤーの統合構想が発表されるなど、待ったなしのグローバル競争に向け、国内自動車業界がいよいよ「自前主義」から重い腰を上げ始めた。

国内ビッグ3系列で見ると、トヨタ系列部品メーカーが協業や合弁会社設立などにいち早く乗り出し、一部ホンダ系部品メーカーも来年本格的に統合に動き出す一方で、日産陣営ではまだ動きは見えない。一部日産系サプライヤーでは「他系列で再編が進んでいるが、将来の市場動向が見えにくい現状では、再編よりも他社協業や提携が得策かもしれない」との見解を示す。

CASEに対応した次世代車普及に向けた過渡期の現在、異業種からの新規参入組や評価・試験領域、解析ツール領域、ソフトウエア領域などの「周辺領域」の事業拡大が加速する一方で、部品メーカーなど製造業本体が苦境に陥っている現状が何を示唆するのか、自動車メーカーと部品メーカーは従来以上に一体となって再考する時期にきている。

日刊自動車新聞12月25日掲載

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