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2019年12月27日

〈回顧2019〉①新車 増税、自然災害が市場に冷水

2019年の新車市場は、暦年で3年ぶりの前年割れとなる公算が大きくなっている。中盤まで比較的堅調な動きを見せていたものの、10月に急減速。消費税増税に加え、大型台風や長雨などの自然被害が消費マインドに水を差した。

11月の落ち込み幅を見ると、市場は回復に向かっているが、年末までの挽回は難しそうな情勢だ。しかし、登録車と軽自動車を合わせた総市場では3年連続の500万台超えが確実なところまで来ている。20年市場の反転攻勢につなげるためにも、どれだけ登録・届出を上積みできるか、最後まで目が離せない状況が続いている。

1、2月と堅調な滑り出しを見せた今年の新車市場。年間を通じて販売台数が最大となる3月に落ち込みを見せたものの、「平成」最後となる4月と「令和」最初の5月で再びプラス基調に転じていた。消費税増税が目前となった9月には、総市場で今年唯一の2桁増を記録するなど駆け込みムードも出たが、直後に暗転する。

10月は登録車が統計開始以来、同月として過去最低となったほか、軽も過去10年間で下から2番目の低水準に沈んだ。増税後の常である反動減だけでなく、想定外の自然災害によって店頭への来客に影響が出たことがディーラーや業販店を苦しめた。前年同月の新車市場が好実績だったことも、見た目の落ち込み幅を大きくしている要因にもなっている。

さまざまな外的要因が重なったことで、今回の増税影響が図りにくくなっている側面もある。そもそも今回の増税では、政府や与党による手厚い景気浮揚策が盛り込まれ、経済への悪影響を最小限に抑える計画だった。自動車税の恒久減税に初めて踏み切ったほか、環境性能割の導入など新車市場も十分に考慮されている。

しかし、10月の急ブレーキが複合要因となったため、増税関連だけの検証に時間がかかりそうな見通しとなった。正しい効果検証ができなければ、これからの需要対策の立案にも響く恐れがある。想定外の自然災害は、将来戦略づくりにも影響を与える可能性も少なくなさそうだ。

また、ディーラー網の再編に向けた狼煙が上がった年ともなった。4月に東京都内にあるトヨタ自動車の直営ディーラー4社が統合して新会社「トヨタモビリティ東京」が発足した。これと同時に、都内に地盤がある地場資本ディーラーを含めてトヨタ車の完全併売がスタート。当初22年以降としていた全国での完全併売も、来年5月に前倒しすることも決定した。これに向け、複数の販売会社を有する一部の販売会社でも融合に向けた動きも出始めている。

ユーザーのターゲット別に設けたチャンネルに取扱車種を振り分けることで、長らく販売拡大を実現してきたトヨタ。事実上の1チャンネル化は同社の国内営業戦略が大きく転換する節目となる。

すでに、チャンネル統合による効率化は競合系列が先行している。今後は店舗の最適配備や新たなモビリティサービスへの対応などで、いかに併売効果を高められるか、トヨタ系列ディーラー各社の動きに注目が集まりそうだ。

今年は新車市場をけん引役になっている人気モデルの入れ替わりも目立った。登録車と軽を合わせた総市場で2年以上もトップを守り続けたホンダ「N-BOX(エヌボックス)」が11月、ついにダイハツ工業の「タント」に王座を明け渡した。

登録車だけを見ても10月、トヨタ「カローラ」が約11年ぶりに登録車首位に返り咲いた。登録車では同「プリウス」が4月に1年4カ月ぶりの登録車1位となるなど、トップの顔ぶれが変化する年となった。

今年、台頭したモデルに共通するのは、全面改良や大幅な商品改良を施していること。タントは7月に、カローラも9月に全面改良した。プリウスは昨年末にビッグマイナーチェンジを行っている。こうしたニューモデルの投入は、今でもユーザーの注目を集めることを証明したことにもなる。来年もさまざまなモデルの全面改良や新型車投入も予定されている。新商品を起爆剤に各系列が切磋琢磨していけば、市場活性化にもつながっていきそうだ。

日刊自動車新聞12月24日掲載

 

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