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2019年12月27日

日刊自連載「平成から令和へ 車業界振り返り」(2)自動車メーカーの電動化戦略

2019年は、欧州や中国で厳格化する環境規制を背景に電気自動車(EV)のコンセプトモデルや電動車の普及戦略を大々的に打ち出す動きが目立った。EVの開発に遅れていたとされるトヨタ自動車は、EVに重点を置いた事業説明会を初めて開き、電動車販売計画の前倒しや電池メーカーとの協業計画を発表。秋に開催された東京モーターショーでは、マツダ、ホンダ、トヨタが市販化を想定したブランド初の量産EVを公開した。ただ、市場ニーズの開拓や部品コストの高さといった課題への対応は、まだ模索の段階だ。

10、11月に開催された東京モーターショーは、EV一色に染まったといっても過言ではない。マツダの「MX―30」、ホンダの「ホンダe」、トヨタの超小型EV、日産自動車の「アリアコンセプト」。日系自動車メーカーのブースに並んだこれらの車種は、いずれも20、21年ごろに日本で市販されるとみられるEVの新型車だ。

EVの開発を加速させる契機になっているのが欧州連合(EU)が21年に導入する燃費規制。規制導入後は、走行1㌔㍍当たりのメーカー平均二酸化炭素(CO2)排出量を95㌘以下に抑える必要がある。

基準を満たせなかった企業は、1㌘超過するごとに1台当たり95 ユーロ (約1万1500円)の罰金を課せられ、ブランドイメージも低下する。

このため、フォルクスワーゲン(VW)やBMW、ダイムラーといった域内の自動車メーカーは、電動化に向けた多額の投資計画や普及目標を相次いで発表。VWは20年からの5年間で330億 ユーロ (約4兆円)を電動車の開発などに投じ、29年までにグループ全体で約75車種のEV、約60車種のハイブリッド車を投入する。

日系自動車メーカーでも、25年に欧州で販売する3分の2を電動車に切り替えるとしていたホンダが3月に「25年に全て電動車にする」と公表し、さらに10月には「全て電動車にする時期を22年に前倒しする」と矢継ぎ早に目標を上方修正した。

電動車の投入を加速し、環境規制への対応を図る各社だが、成熟技術である内燃機関と比べてコストがかかる電動車は収益化のハードルが高い。6月に電動車戦略を発表したトヨタの寺師茂樹副社長は「EVを単純に生産して売って、サービスでという単純なビジネスモデルではうまくいかない」と指摘する。中古EVの販売体制や電池のリユース、リサイクル、サブスクリプション型ビジネスモデルの構築を進める必要がありそうだ。

また、ブランド初となるEV「ID.3」の量産を開始したVWは、EV専用プラットフォーム「MEB」をグループ外にも外販することにより、量産効果で収益性を高める。ヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は、「(EVは)25年頃には内燃機関と同等の収益を確保できるようになるだろう」と見通しを示す。

「いつかは普及する」というスタンスだったEVへの対応は、いまや自動車メーカーにとっての喫緊の経営課題。市販モデルの投入が本格化する20年、EVの販売動向や新たなビジネスモデルの確立が注目される。

日刊自動車新聞12月24日掲載日刊自動車新聞

開催日 2019年12月24日
カテゴリー 白書・意見書・刊行物
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