2019年12月23日
いすゞ、ボルボと提携
18日午後、都内で会見したいすゞの片山正則社長(左)とボルボ・グループのマーティン・ルンドステット社長兼CEO
いすゞ自動車とスウェーデンのボルボは18日、戦略的提携を結ぶと発表した。環境規制の厳格化などを背景に商用車の競争が激しくなる中で、アジアでの中小型トラックを得意とするいすゞ、欧米での大型トラックを得意とするボルボがシナジーを生み出せる補完関係にあると判断した。
先進技術開発で協業するとともに、互いの強みを補完し、アジアを中心とした大型トラック事業の強化を進める。第1弾としてボルボの完全子会社であるUDトラックスを20年末までにいすゞが子会社化し、日本やアジアでの事業拡大を図る。 18日に都内で開いた記者会見で、いすゞの片山正則社長は「商用車メーカーとの提携が必要だった」と述べた。
いすゞは先進技術への対応で開発の負担が重くなる中で、昨年にトヨタ自動車との資本提携を解消。次世代技術の開発では、トヨタなどが設立したEVの共同開発会社「EV C・Aスピリット」に参画するものの、広範囲にわたる技術開発のための新たなパートナー探しが課題になっていた。
特に日本では市場規模が小さいものの、自動化や電動化技術のニーズが強い大型車の次世代技術対応が課題になっていた。ボルボとの提携で大型トラックの次世代技術開発や量産技術の確立につなげる。
一方、ボルボは電動化や自動化で先行するものの「研究開発費の負担は課題だった」(ボルボグループのマーティン・ルンドステットプレジデント兼最高経営責任者)とし、提携関係を拡げることにより、技術開発を加速する。
UDトラックスの移管については「両社がさらに成長できる」(片山社長)とし、いすゞはUDが展開するコネクテッド技術を活用した次世代整備の知見の活用を見込むほか、商品の統合を検討し、量産効果に結びつける。また、生産体制の合理化も進める。
今後は両社の資本提携も焦点になるものの、「現在の形で協業の方向性は具体的に共有化できており、現時点では考えていない」とした。
次世代技術の対応をめぐっては、日野自動車が昨年9月にフォルクスワーゲングループの商用車部門であるトレイトンと電動化領域の協業を発表した。
日刊自動車新聞12月19日掲載
開催日 | 2019年12月18日 |
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カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
主催者 | いすゞ自動車、ボルボ |
対象者 | 自動車業界 |
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いすゞとボルボ提携、必須だった大型車提携
いすゞ自動車の提携史では、ゼネラル・モーターズ(GM)との関係がもっとも長い。1971年に資本提携を含む全面提携を結んで以降、35年にわたり緊密な連携を結んだ。GMの業績悪化にともなう関係解消後はトヨタ自動車と資本業務提携を結ぶが、具体的な成果に結びつかず2018年に解消。次の提携先が注目されていた。
GMと提携する前の60年代、業界再編へのうねりの中でいすゞは66年に富士重工業(現スバル)と業務提携を結ぶ。68年には三菱重工業と業務提携を前提とした共同声明を発表するが富士重の賛同を得られず、68年に提携を解消。70年には日産自動車と提携し日産車の受託生産を開始するが、日産ディーゼル工業(現UDトラックス)との合併に進展せず、わずか一年で提携は解消する。
GMとの資本提携では、車両供給や乗用車「ジェミニ」の共同開発など関係を深めていたが、業績が悪化したGMは06年にいすゞの全株式を売却した。その後、トヨタがいすゞ株を5・9%取得し、ディーゼルエンジンの開発や技術面の補完する協業を目指したが、こうした事案は両社に果実を生まず、18年に資本関係を解消する。
大型車メーカーでは次世代技術の開発や物流課題などに対応するためのスケールメリットを打ち出す協業が欠かせない。日野自動車は18年にフォルクスワーゲントラック&バス(現トレイトン)と業務提携を締結。いすゞはトヨタとの提携が10年以上にわたり、大型車メーカーのパートナー探しが遅れた面がある。