会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2019年12月18日

自動車メーカー各社、使用済みEV電池急増期で有効な二次利用スキーム模索

日産自動車「リーフ」や三菱自動車「アイミーブ」の発売からおよそ10年。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)が本格的な代替期を迎え、大容量の使用済み車載リチウムイオン電池が急増する時期に入る。自動車メーカー各社は、二酸化炭素(CO2)の削減やさらなる電動車の普及を目指し、使用済み電池の二次利用に向けた取り組みを加速している。

使用済み車載用電池を二次利用する取り組みは、トヨタ自動車が13年ごろから「プリウス」に使用するニッケル水素電池を使用した蓄電池を販売店に導入するなど以前から行われてきたが、リチウムイオン電池はニッケルよりも性能と価格が高く、二次利用の価値が一層高まりそうだ。

2010年12月に初代「リーフ」を投入した日産自動車は、使用済み電池の活用についてもさまざまな取り組みを進めてきた。同社と関連会社のフォーアールエナジー(4R)は、18年3月に世界で初めて使用済みEV用電池の再製品化工場を開設し、新品の約半額で再生電池の販売を開始した。同工場がある福島県浪江市では使用済みバッテリーを再生した街灯を幹線道路に設置するプロジェクトを展開するなど、EV用電池の〝第二の人生〟のあり方を模索する。

コンビニエンスストア最大手の「セブン―イレブン」では、リーフの使用済みバッテリーを再生した定置型蓄電池を神奈川県内の10店舗に設置し、再生可能エネルギーを活用した店舗運営の実証実験を9月から行っている。4Rが再生した定置型蓄電池は価格が安いのが特徴で、実証実験を通じて中古電池に要求される性能を検証する。

リーフの累計販売台数はグローバルで44万台、国内でも13万台にのぼる。日本事業広報渉外部の大神希保担当部長は「初代リーフ販売から9年が経ち、中古バッテリービジネスも見えてきた」と話し、大容量で高性能かつ安全性の高いEV向けバッテリーを再利用したビジネスモデルの構築に意欲を示す。

三菱自動車も「アウトランダーPHEV」の使用済み電池を活用した新たな取り組みを開始する。三菱商事と共同で岡崎製作所(愛知県岡崎市)に出力3㍋㍗の太陽光発電設備とPHEV100台分の使用済み電池を使用した発電量1㍋㍗時の蓄電池システムを20年度内に稼働させる。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を使用せず、自家消費する屋根置きの太陽光発電サービスでは国内最大規模。発電、蓄電した電力は岡崎製作所で使用し、年間約1600㌧分のCO2削減と電力消費のピークカットにつなげる狙いだ。

厳しい品質基準で製造された大容量の車載用電池は駆動用電池としての寿命を迎えてもなお活用の余地は大きい。ただ、状態次第で車載用中古電池として再度利用するのか、定置型蓄電池として利用するのか、使用方法が変わる。このため、経済産業省では9月、電池の劣化具合を表示するよう自動車メーカーに要請する方針を固めた。寿命を見える化し、EVの価値判断を適切化するとともに、最適な二次利用につなげる。
電池メーカーもこうした動きに呼応した技術開発を進める。東芝は電池の劣化状態を材料レベルで診断できる新技術を開発。充電時の電圧変化などを調べ、走行距離や使用時間だけでは判断できない正極、負極の状態を判別する。充電ステーションなどで情報を取得できる仕組みを構築する考えだ。

IHSマークイットが今春発表したデータによるとリチウムイオン電池の価格は1㌔㍗時当たり197㌦(約2万1千円)。新車搭載時のコストの高さに加え、電池のリセールバリューの不透明さがEV購入のボトルネックになっている側面もある。電池の状態を判断する技術と有効な二次利用のスキームの確立がEV普及の重要な鍵を握る。

日刊自動車新聞12月14日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

自動車メーカー

対象者 自動車業界