2019年12月17日
日刊自連載「PwC『デジタル自動車レポート2019』」(下)欧・米・中の5G車販売30年に1600万台
PwCネットワークの「デジタル自動車レポート2019」では、欧州・米国・中国を対象とした自動車市場の分析をまとめている。今後の動向が注目されているコネクテッドや電動化、自動運転を中心に、各国市場の行方などを予測している。
第5世代移動通信システム(5G)対応車両の販売台数は、2030年までに欧・米・中で1600万台に達する見通しだ。これに対して、コネクテッドサービスは30年までに810億㌦の市場規模になるとみている。ただ、コネクテッドサービスは主にユーザー体験を豊かにするものの、自動車メーカーやサプライヤーが収益を上げられる可能性は極めて限定的と想定。ナビゲーションが行き先を予測提案するといったコネクテッドサービスなどは、コネクテッドカーの普及などでコモディティ化するにつれ、顧客の支払い意志額は減少していくと指摘している。
また、電動化については30年までに中国における新車登録の約46%が電気自動車(EV)になると予想する。22年以降は都市などで公共の充電インフラが十分整備されるなど需要を伸ばす。米国では35年までに約35%がEVになると予想。
比較的低コストである既存の内燃機関車を選択する顧客層が存在するため、他の地域よりは普及率が低い。米国での家庭用充電インフラは30年以降に普及する。欧州では30年までに約40%がEVになる見通し。20年以降に法規制が強まるとみられ、25年以降は家庭用や商用、公共の充電インフラが十分整備される。内燃機関車は走行距離の点で優れているため、高価な燃料電池車が競合になる可能性がある。
一方、自動運転では21年までに時速50㌔㍍未満で走行する乗客を輸送する車両で自動運転レベル4が実現すると想定する。ただ、レベル4またはレベル5の自動運転車があらゆる路上で運転できるようになるのは29年以降になると予測している。高度な自動運転機能の導入予定時期は、これまでに何度も延長されてきた。理由としては先進運転支援システム(ADAS)のソフトウエア開発および車両実装が当初予想していたよりコストが高かったことや、高速道路におけるレベル3の車両の認可についてまだ定義されていないことが挙げられる。
自動運転の普及は、技術コストの高騰に加え、自動運転車の走行可能地域が制限されていることからも遅れている。欧州では30年には新車登録台数の25%がレベル4またはレベル5の自動運転車になると予想。路上走行可能なレベル5は28年まで実用化されないとみる。
米国では30年までに新車登録台数の最大10%がレベル4の自動運転車になると予想。自動運転機能が正常に作動する条件を表すODD(運行設計領域)のカバー率が高い新車と、ODDカバー率が低い新車が含まれる。中国では30年までに新車登録台数の20%がレベル4またはレベル5となる。自動運転車の受け入れ可能な都市では40%を超えるとみる。中国では自動運転用のインフラを段階的に整備するため、レベル5は28年以降の実用化となるとした。
規制は普及の鍵としての役割を果たしており、コネクテッド、自動運転、電動化にとって追い風になっている。ベルギーやドイツではEVの購入に対して税控除を設けるなどのインセンティブを設定。また、欧州の自動車メーカーは厳格な二酸化炭素(CO2)排出規制に従う義務などが電動化を加速させていく。米国でもカリフォルニア州ではCO2排出ゼロ車を義務化する法律が可決された。一方、中国と日本では自動運転車の公的試験が可能な地域を拡大しており、自動運転の普及を後押ししている。
日刊自動車新聞12月13日掲載
カテゴリー | 白書・意見書・刊行物 |
---|---|
主催者 | PwCコンサルティング合同会社 |
開催地 | 世界 |
対象者 | 自動車業界 |