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2019年12月4日

本格普及期 「つながるクルマ」 乗用車に続々搭載

トヨタはDCMの標準搭載でコネクテッドサービスの素地を整える

国内の乗用車でインターネットに常時接続する「つながるクルマ」の普及が加速している。ホンダは来年2月発売の新型「フィット」に専用車載通信機(DCM)を初搭載する。スバルも2020年後半に全面改良する「レヴォーグ」でコネクテッドサービスを展開する方針を示した。

つながるクルマは運行管理サービスなどで商用車が先行していたが、乗用車メーカーの投入も本格化する。車から得られる大量のデータによって渋滞緩和や自動運転技術の向上などが期待される一方、コネクテッドサービスの事業採算性やユーザーメリットの分かりにくさなどの課題も残る。

「携帯電話が鳴って、水没項目が出ているので確認してもらえるかと聞かれた」―。台風による大雨に見舞われたある日、自宅の2階で過ごしていたトヨタ「プリウスPHV」のオーナーは、DCMの機能によって水没したクルマの状況を察知したオペレーターの連絡によって1階の浸水を知り、台風の災害を逃れることができたという。トヨタは昨年6月、初代コネクテッドカーである「クラウン」と「カローラスポーツ」の発表時にこのエピソードを紹介し、つながるクルマの可能性を示した。

トヨタはクラウン以降に投入したほとんどの新型車にDCMを標準装備し、コネクテッドカーの普及を加速させている。サービス利用料金も無料期間を当初の3年から5年に延長し、事故時に自動でオペレーターに接続する「ヘルプネット」や遠隔で車両診断する「eケア」などのつながる機能の利便性を広くユーザーに体感してもらう狙いだ。

マツダも新型「マツダ3」からコネクテッドサービスを開始。資本業務提携を結ぶトヨタからDCMなどのハード面の供給を受ける一方、オペレーターサービスなどソフト面は独自に開発して差別化を図った。コネクテッド技術は開発やシステムの運用などに莫大なコストがかかるが、現状のサービスでは収益化が難しい。マツダはトヨタと手を結び、コネクテッドカーの普及に取り組む。

日産はDCMを活用して高度な運転支援システムを実現した。一定の条件下で手放し運転を可能とする「ハンズオフ」のキー技術となる3D高精度地図データの更新や機能チェックなどをDCMを介して行う。ユーザー向けには、アプリで目的地を設定することで徒歩ルートから案内する「ドアtoドアナビ」などのつながるサービスを展開する。

ホンダは専用DCM「ホンダコネクト」を2月発売のフィットから順次、新型車に搭載していく。DCMを活用した新サービス「ホンダトータルケアプレミアム」では、離れた場所にあるクルマのエアコンを始動させたり、異常が発生した場合に警備会社のガードマンを現場に急行させる機能などを搭載する。新型レヴォーグからDCMを搭載するスバルも、自動で緊急通報を発信することで安全性を高める。

一方、ダイハツはDCMを搭載せず、スマートフォンを用いたコネテクテッドサービスを展開する。小型SUV「ロッキー」から導入する「ダイハツコネクト」では、スマホとディスプレーオーディオを連携させることで事故発生時の自動通報や高齢ドライバーの見守りサービスなどを提供する。DCMを搭載しないことで低価格につながるサービスを提供する。

自動車産業に変革をもたらすCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の一角である、つながるクルマの普及がいよいよ本格化するが、ユーザーの期待度はまだ高まっていないようだ。デロイトトーマツグループ(永田高士CEO、東京都千代田区)が10月に発表したCASEの消費者意識調査では、4割近くが「コネクテッドサービスを有料では利用したくない」と答えた。濵田悠アソシエイトディレクターは「インフォテインメント機能はスマホで代替できる」と分析する。現在、多くのコネクテッドサービスは期間限定で無償で提供されるが、有料に切り替わった際の継続率をどれだけ維持できるかが課題となりそうだ。

日刊自動車新聞11月30日掲載

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