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2019年11月27日

〈リサイクル北から南から〉NGPとJARA、台風被災地に臨時ヤード開設、冠水車両の引き取り迅速に、タウは臨時モータープール、洗浄後査定、ウェブに上げ販売

NGPの臨時ヤードへは多くの被災車両が集められていた

10月12日に発生した台風19号の豪雨により冠水した車両の引き取り作業に奔走しているリサイクル事業者。なかでもNGP日本自動車リサイクル事業協同組合(佐藤幸雄理事長)やJARA(北島宗尚社長)では被害が甚大だった地域に臨時ヤードを開設し、グループをあげて被災地の復旧を後押ししている。被災地の一つ、福島県いわき市のヤードにも多くの冠水車両が集められていた。

NGPは10月17日に「台風19号 水害対策本部」を都内のNGP本部に設置し、被災地の宮城、福島(3カ所)、栃木、長野、埼玉の計7カ所に臨時ヤードを開設、冠水車の引き取り作業に当たっている。提携する損害保険会社(あいおいニッセイ同和損保)の要請を受け、保険契約車両の引き取りから保険金の支払いまでをスムーズに進めるため各被災地域で冠水車をヤードに集めて迅速な対応に当たっている。

いわき市では閉鎖したゴルフ場の約4000平方㍍ある敷地に臨時ヤードを構えた。小林信夫副理事長(水害対策副本部長)の陣頭指揮で、全国各地から応援に駆け付けたNGPメンバーが毎日引き取り作業に当たっているが、災害発生から1カ月経過した今も車両の搬入が途絶えない。10人体制で5、6台の積載車を稼働させ、引き取り台数は1日30~50台に上るが搬出作業も同時に進め、クルマをスムーズに回していた。引き取った冠水車はすべて廃車となり、使用済み車として適正に処理される。

室内まで泥水に浸かった冠水車両は重量も増え作業は難航する(JARAの臨時ヤード)

小林副理事長は地元の栃木県でも冠水車の引き取りに追われている中、現場統括の副本部長としていわきに滞在し活動していた。「いち早く撤収するため使命感を持ってやっている」と思いを語り、「2008年の東海地方の豪雨で災害対応を経験したことが、次の新潟の災害で生きた。みんなで協力することはNGPにある〝恩返しの文化〟で恩返しの連鎖になる」とし活動支援の意義を語る。連日作業の疲労から組合員が事故を起こさないよう、毎日の朝礼では安全と引き取り品質を大切に作業するよう呼びかけていた。

JARAでは地域の会員企業が対応しきれない状況を受け、宮城と福島(いわき市)の2カ所に臨時ヤードを設置。いわき市には10月下旬に開設し、本部社員と地元会員企業キャレック

のスタッフが現場対応にあたり、引き取りはレッカー事業者が行っていた。1万3千平方㍍のヤードには11月12日までに約530台が集められた。 現場対応に当たっていた車輛事業グループの千葉拓磨グループ長は、東日本大震災の時の対応など多くの災害支援を経験している。「冠水車両は泥水を含んで重さが3、4割増しになる」と通常よりも作業が難航している状況を説明した。また、ハイブリッドカー(HV)が多数含まれ、高電圧系統の取り扱いではサービスプラグを取り外すなど安全面には十分注意しながら作業に当たっていた。一方、キャレックの渡邊寛樹副社長は「ヤードを探すのに苦労した。地方ではクルマが生活の一部になるので、行政にも一時保管場所の開設を検討してもらいたい」と話していた。

JARAでも災害対策本部を通じて現地で活動するボランティアを募っており、過去に災害で支援を受けた西日本など遠方からたくさんの応募があったという。今後、現地のサポートスタッフを増やし、車両の搬出などの対応を急ぐ。

一方、リサイクル事業者以外にも損害車買い取り、販売のタウ(宮本明岳社長、さいたま市中央区)がいわき市に臨時モータープールを2カ所設置し、保険会社やディーラー、ユーザーからの依頼で車両を集めていた。同社は冠水車を洗浄して車内の堆積物を取り除き査定し、各車両の情報を独自のウェブサイト(オークションサイト)にアップして、世界119カ国の会員に販売している。同社によると今回の冠水車台数は全国で約20万台と試算し、そのうち2万台を同社で引き取る見通しを立てている。現地の自動車関連事業者によると「冠水車の電子部品や機能部品は故障リスクがある」との見解だが、「車の状態を一台一台見極め、クレームも受け付ける」(タウ広報課)とした対応を取っており、引取車のうち約半数が流通する見通しだという。

タウでは引き取り車両を査定し海外などで流通させる

各事業者は復旧を急ぐが、今回の豪雨被害は広域に及んだため想定以上の時間が掛かっている。NGPの小林副理事長は毎年災害が発生している現状を踏まえ「もっと詳細を詰めた災害対応のスキームを構築していく必要があり、活動をよりよいものにしていきたい」と今後に備える考えを示していた。

日刊自動車新聞11月25日掲載

カテゴリー 社会貢献
主催者

NGP日本自動車リサイクル事業協同組合、JARA

開催地 福島県、栃木県、長野県、埼玉県
対象者 大学・専門学校,一般,自動車業界