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2019年11月27日

台風被害に迅速な中古車供給 乗用車メーカー、販社間で仲介スキーム

台風による集中豪雨で冠水・水没した車両が急増した(福島県いわき市内にある被災車両置き場)

東北と東日本で相次いだ台風被害。被災地では車両の冠水や水没被害が多発し、中古車の需要が高まっている。廃車に伴う代替に加え、車両保険で代車特約を付けている被災者からの代車ニーズに供給量が足りないためだ。

乗用車メーカーは全国の系列販売会社と連携し、中古車の共有在庫システムなどを活用した販社間の仲介スキームを立ち上げて被災地の系列販社と顧客の支援に取り組んでいる。災害後の迅速な支援体制を整えられたのは、過去の大規模災害で得た教訓と事業継続計画(BCP)が生きた成果だ。

地方の住民にとってクルマは生活必需品。水没被害などでマイカーを失った被災者は「とにかく早く足が欲しい」とのニーズを抱える。中古車は新車と比べて納車にかかる時間が短く、購入費用も安価に抑えられるため中古車を求める被災者が急増した。また車両保険の代車特約を使って代車を求める被災者も多い。販社は系列のレンタカー会社などから車両の確保をやり繰りするが、代車ニーズに追いつかず展示車や中古車を代車に出すケースも少なくない。

災害後ならではの中古車需要の変化を受けて、乗用車メーカー各社では、販社間で中古車の在庫融通を実施しやすい仲介スキームを構築。「被災地の販社から中古車の希望があった場合、可能な範囲で在庫融通に協力してほしいと全国の系列販社に依頼している」(日産自動車関係者)。ダイハツ工業は10月中旬、全国の販社代表者が集まった会合で被災地の販社に向けた中古車の支援を呼びかけた。「メーカーとしても最大限の支援を行いたい」(奥平総一郎社長)との考えも示した。

スバルでは、中古車担当部署が全国の系列販社の中古車在庫から「低価格」「低年式」「車検残あり」といった被災地の中古車ニーズに適した車両を一覧化して、被災地の系列販社に情報提供した。希望する中古車があった場合は、中古車政策会社の新スバル中販(前田正弘社長、神奈川県愛川町)を通じて販社間で売買を行える仕組みとした。ホンダも、特定の系列販社から低価格で提供してもらえる中古車在庫情報を収集。被災地の系列販社に発信して、販社間で在庫融通しやすい環境を災害後すぐに構築した。

トヨタ自動車とホンダでは、子会社の中古車事業会社と連携した支援も展開している。トヨタユーゼック(北口武志社長、千葉市美浜区)は、販社間で行われる在庫融通に関わる実務を一手に担う。車両購入申し込みの受理をはじめ車両検査や購入した販社への輸送業務などを行っている。

ホンダユーテック(伊藤哲也社長、埼玉県和光市)は、代車の支援で一定台数の在庫中古車を被災地の系列販社に無償で貸し出した(保険料など別)。期間は来年1月末まで。貸し出し期間終了後、買い取りを希望する系列販社にはそのまま業販する。小売り向け中古車の仕入れ支援も共有在庫を通じて行っている。

被災地では、中古車需要の高止まりがしばらく続く見通し。台風被害後の対応について、乗用車メーカー各社からは「東日本大震災などの教訓から、近隣の系列販社間で中古車の在庫融通など支援体制を迅速に整えることができた」(スズキ関係者)と評価する声は多い。ホンダとホンダユーテックでは、中古車を代車として被災地の系列販社に届ける日数を、昨年の西日本豪雨の時では最短で1週間を要したが、今年の大型台風では最短4日にまで短縮した。

日刊自動車新聞11月25日掲載

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