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2019年11月27日

走行課税、水面下で検討 20年度税制改正議論が本格化

2020年度に向けた税制改正議論が本格化する。自民、公明両党は21日、税制調査会(税調)の総会をそれぞれ開き、議論を始めた。今年はエコカー減税の裏年で、企業や個人の投資を促す税制が主な議題だが、政府・与党は水面下で走行課税も検討している。

業界は来月上旬にまとまる税制改正大綱の書きぶりに警戒する。 業界が注視する走行課税は昨年末の税制改正議論で急浮上したが、大綱では「走行」の2文字が消え「課税のあり方について中長期的な視点に立って検討を行う」との表現にトーンダウンした。「電気自動車(EV)がさほど普及していないことに加え、走行距離の把握など技術面で課題も多く、時期的にまだ早いと考えたのではないか」と業界筋は解説する。

今年もこうした状況に変化はないが、石油業界は11月13日に都内で開いた総決起大会で「急速に普及が見込まれるEV等への課税方法を早急に検討すべき」との決議を採択した。石油連盟の吉村宇一郎常務理事は走行課税について「アメリカでは実証試験が行われているし、GPS技術も進んでいる」と話す。同連盟によると、オレゴン州では一部で導入され、カリフォルニアやアリゾナなど17州でも調査や実証が進んでいるという。

使用者負担の観点からは一見、公平に見える走行課税だが、懸念は「課税規模や課税水準を財政当局が恣意的に決められる点」(業界関係者)だ。日本自動車工業会は「Xデー」に備え、主要国の課税事例を調査するが理論武装はこれから始める。石油業界の要望も、揮発油税に消費税が課税される「タックス・オン・タックス」や「当分の間税率(旧暫定税率)」などの是正が背景にあるが、走行課税はそもそも燃料税収の先細りを補う狙いがあり、燃料課税の軽減につながるかは見通せない。

関係筋によると、自民税調の幹部はEVの普及度合いや課税技術の難しさなどを理由に、今年も導入の是非を税調の場で議論するのは時期尚早との意向を示しているという。ただ、大綱とりまとめの直前まで手の内を明かさず、要望項目を滑り込ませるのは財政当局の常套手段。自動車関連団体は「今年も課税の簡素化や負担軽減の必要性を訴え、来年のエコカー減税見直し時に車体課税を抜本的に見直すきっかけにしたい」と話しつつ、走行課税実現への外堀を埋められないよう警戒を怠らない構えだ。

日刊自動車新聞11月25日掲載

開催日 2019年11月21日
カテゴリー 白書・意見書・刊行物
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対象者 一般,自動車業界