会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2019年11月20日

日刊自連載「交通安全・医理工連携の今 『世界一』への挑戦」(11)車や道路環境の高度情報化の下での標識・表示と人間特性との関係の最適化について

近年は車両の運転走行時における運転者の安全性をより向上させることを目的として、コンピューター技術を基礎にした高度な情報処理システムの開発、改良が車社会にも浸透し、これの実場面における応用と普及促進が全国的な規模で進展していることは周知のことである。

実際、既にエレクトロニクス技術や情報通信技術を用いて運転者(ヒト)、車(乗り物)、道路(環境)の間で相互に情報のネットワークを構築することで交通管理支援や交通円滑化支援をしようとする試みは実用段階を迎えているものも多く、カーナビゲーションシステム、ノンストップ自動料金収受システム(ETC)、道路交通情報通信システム(VICS)、車間距離制御システム、車維持支援装置、そして衝突被害軽減ブレーキ装置等々多くのシステムが実用段階に入り、その恩恵を享受していることは論をまたないところである。

しかしながら、このような自動化や情報化は時として運転者の意識レベルを急速に低下させることにもつながっていることは種々の研究結果より明らかになっており、最適なシステム運用や利用をしようとする場合には意識状態の活性化や長時間にわたる維持のための方法を確立させなければならない。

近年我が国における高齢化が進み、またVDT(Visual Display Terminals)作業に代表される視覚中心作業が普及するなかでの視力の低下に代表される感覚機能の低下が若年齢世代を中心に認められる中で、如何にマン・マシン・インターフェースを理想的に設計していても最終的な評価・判断が人間に、現在のところ、委ねられている以上、個人、一人一人の主体的かつ高い意識レベルの基での認知、判断、行動が最終的に求められることになる。

これを前提にした場合、車や道路環境の高度情報化の下では、これによってひき起こされる能力低下や倦怠感、怠惰感、意欲喪失の増大などの諸要因が直接・間接的に運転の各フェーズでシステムとのミスマッチを起こし、不安全行動や事故につながる危険要因となり得ることは想像に難くない。

従ってこのような視点からも道路標識は言うに及ばず道路標示など視覚情報全てに関わる明視性を高めるためには人間特性、即ち階層構造になっていること、恒常性を持っていること、拮抗性があること、24時間の生理的リズムを持っていること、適応性を持っていること、テンション・レベルを調節できること、同期性があることなどの諸点にできるだけ配慮され、最適にマッチングした標識や表示の製作、設置がますます重要になり、特に本年より正式に国家資格として位置づけられた標識や表示の全ての点からの検討・応用・設置が全てのタイプのヒトが運転をする車について求められており、これらにも配慮、追求することは本資格の所有希望者の可/不可を筆記試験等により評価、選別、決定している㈱日本標識・表示業協会の諸活動にも配慮されており、期待をするところ大である。

日本交通科学学会 医療、工学、自動車メーカー、行政など幅広い分野からトップレベルの専門家・識者が参加。それらの知見を融合して安全な交通社会づくりを支援することをねらい半世紀以上、活動を展開している。


(日本大学名誉教授 一般社団法人日本交通科学学会元会長 大久保 堯夫)

日刊自動車新聞掲載11月16日

カテゴリー 交通安全,白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社まとめ

対象者 一般,自動車業界