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2019年11月18日

EV航続距離、トレンドは200キロ?

航続距離が200㌔㍍(WLTPモード)程度の電気自動車(EV)を提案する動きが出始めた。ホンダは航続距離が220㌔㍍の「ホンダe」を、マツダは200㌔㍍の「MX-30」をそれぞれ来年に欧州で納車を開始する。これまで航続距離はEVの商品力を大きく左右する要素とされてきた。しかし、デザインとのバランスや、製造から廃棄までのライフサイクル全体での二酸化炭素(CO2)排出量を考慮し、あえて200㌔㍍ほどに収めたEVを投入するメーカーも現れている。

ホンダe
量産EVで他社をリードしてきた日産自動車の「リーフ」の航続距離は、欧州基準のWLTPモードで270㌔㍍。今年追加した高性能モデル「リーフe+」の航続距離は、385㌔㍍に達する。これらと比較すると、ホンダやマツダの新型EVの航続距離は短い。ホンダeも、MX-30も、バッテリー容量は35・5㌔㍗時で、パナソニック製を採用する。

「EVの航続距離は長ければ長いほど、ユーザーの不安を解消できる」(日産)という見方もある中で、ホンダとマツダがそれぞれ航続距離を200㌔㍍程度としたのは理由がある。ホンダがホンダeの開発で重視したのは、「コンパクトカーらしい取り回しの良さと親しみのあるデザイン」(開発者)だ。バッテリー容量を「むやみに増やすと車重が重くなる上に、コンパクトカーらしいデザインに収めるのが難しくなる。車両価格も高くなる」と考えた。

マツダは車の製造から廃棄までのライフサイクル全体で発生するCO2排出量を考慮し、バッテリー容量35・5㌔㍗時にこだわった。バッテリーは製造時に大量のCO2を発生し、EVは内燃機関車と比べて製造時に約2倍のCO2を排出する。

マツダ MX―30
同社が欧州の電源ミックスで試算したところによると、「バッテリーの交換を推奨する走行距離16㌔㍍時点でのライフサイクル全体のCO2排出量は、35・5㌔㍗時バッテリー搭載車であれば、ディーゼル車を下回る」としており、本質的なCO2削減の観点から35・5㌔㍗時のバッテリー容量を選択した。

航続距離そのものについては「日本や欧州のユーザーの1日の平均走行距離は、50~60㌔㍍。約9割の人は、1日100㌔㍍以下しか走らない」(ホンダe開発者)、「EVのシェアが高いノルウェーのユーザーの約7割は内燃機関車を併有する。米国でも9割はEV以外の車両を世帯内で保有しており、EVと内燃機関車は用途に応じて使い分けられている」(マツダ担当者)としており、200㌔㍍でユーザーニーズをカバーできるとみている。今後本格的な普及期を迎えるとされるEV。ホンダとマツダのEVがどの程度支持されるかによって、ユーザーがEVの車種を選択するときに航続距離をどの程度重視しているかということも見えてきそうだ。

日刊自動車新聞11月15日掲載

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