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2019年11月15日

NEC、顔認証など映像・画像解析技術 自動車業界への応用に取り組み

日本電気(NEC)は、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」に入退場での顔認証システムを提供し、注目を集めた。自動運転の普及を見据え、生体認証技術や映像・画像解析技術といった独自技術を自動車業界に応用する取り組みを始め、実用化に向けた開発を進めている。

ドライバーの識別やモニタリングができる「モビリティ向けAI評価キット」を自動車メーカーや部品メーカー向けに提案する。太陽光の影響を受けづらい光の波長の長さ(940㌨㍍)の近赤外線を使用することで、日差しの強い昼間でも高精度な映像解析ができる。当面は自動運転化が進んでも、緊急時はドライバーが操作しなければならず、ドライバーの状態を検知するシステムは今後、ニーズが拡大すると考えられている。同製品は、ドライバーの数秒間のよそ見や目を閉じるなどの行動を検知し、安全対策に役立てる。また、シェアリングの発展を見込み、ドライバーを識別してシートの位置を変えることや、あらかじめ登録した音楽を流すといった車室内の快適度を向上させる用途での提案も視野に入れる。

モビリティ向けAI評価キットのカメラ

自動車の遠隔操作を可能にするシステムの提案も登場した。自動運転機能の故障や交通事故を起こして、正常な運転ができなくなった場合、車を安全な場所まで移動させる必要がある。その遠隔操作を行う管制センターのオペレーターなどを支援するシステムで、2030年の状況を想定して開発を進めている。「適応NW(ネットワーク)制御技術による遠隔管制」は車載カメラから得た映像データのうち、車や人などの障害物や標識などを検知し、必要な部分の解析度だけを上げることで、実際の位置と送られたデータのタイムラグを最小限に抑えることができる。車載カメラで得た映像をクラウド上で処理・解析し、管制センターに映像を届ける一連の動作を0・3秒以内で行うことでスムーズな遠隔操作を可能にする。

適応NW制御技術による遠隔管制。赤枠内の画質と枠外の画質が違うのがわかる

また、16年に国土交通省が道路の舗装点検要領を発表したことで、従来は人の目視によって行っていた道路の点検を効率化する取り組みが活発化している。ドライブレコーダーとAI(人工知能)で道路の劣化具合を診断するシステムで、20年をめどに自治体などに向け、サービス開始を目指している。NECが開発したドライブレコーダーを車に設置して走行することで、道路のひび割れや凹凸を検知する。AIが映像データからひび割れを検知し、内蔵された加速度センサーが走行中の振動を検知して、IRI(路面の凹凸の評価指数)として診断する。同社では「車に搭載して走行するだけで日常的に広範囲のデータ取得ができる簡易性」を優れている部分として挙げている。今年6月から3カ月間、静岡県藤枝市で実証実験を行い、実用化に向けた取り組みを進めている。 生体認証や映像解析の技術は、空港のチェックインなどに向けたものだったが、NECはそれを自動車業界へと活用の幅を広げることで存在感を強める考えだ。

ドライブレコーダーを活用した道路劣化AI診断の管理画面

日刊自動車新聞11月13日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日本電気㈱

対象者 自動車業界