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2019年11月16日

日刊自連載「補修塗料新時代」(下)視野の転換と市場開拓

自動車用補修塗料(自補塗料)の中長期のビジネス展開は、水性塗料が大きなカギを握る。塗料メーカー各社は、この10年以上をかけて水性塗料導入に取り組んできた。本格的な成果出しは、まだ今後の課題であるが、板金塗装(BP)事業者では作業環境改善の一環として水性塗料導入が経営テーマに浮上しており、商機が近づいてきたことは明らか。減速傾向にあるBP市場での収益力持続に向けて、水性塗料を軸とした販売競争が熱を帯びてきそうだ。

日本車人気が高い海外こそ、補修用塗料の市場  開拓のチャンスになる

日本ペイントは、水性塗料の拡販には一歩踏み込んだ対応が急務だとした。上級車や軽自動車といった車種ごとに要望される塗料が異なっており、よりきめ細かくニーズに対応可能な商品、体制づくりが必要だと考える。また保険料率改定によって、増加した軽補修に適した塗料の用意が拡販に欠かせないともみている。

販売本部ARI販売部長の松本顕取締役は「水性塗料を事業者に提案するだけでは、これからの生き残りは難しい。今後は塗料そのものに限らず、自補塗装に関係するあらゆる分野をバランスよく手掛けていくことが重要ではないか」と、中長期を見据えたテーマを語った。

海外に商機を見出した企業もある。関西ペイントは、海外進出では他社が先行したものの、すでにヨーロッパやアジア、アフリカなどに拠点を開設してグローバルに基盤を整えた。すでに日系自動車メーカーの新車シェアが高い地域では、引き合いが多いという。

海外展開では、国内スタッフが現地で円滑な技術指導と情報共有を行えるように、英語力の向上に力を入れた。さらに、南アフリカの技術スタッフを今年から国内拠点に異動させ、日本の技術を勉強してもらうことにした。国内と各地の連携強化が、海外情報を得る絶好の機会にもなると考える。

自動車補修塗料販売本部長の真貴田厚取締役は「海外の自動車補修分野は良い実績が挙がっている。海外市場は収益だけとどまらず、そこで得たノウハウを日本の製品開発に役立てられることもメリットになる」とし、グローバル展開の重要性を示した。

ロックペイントは、タイを中心とした東南アジアでの水性塗料の拡販を重要項目に置いた。日本車の流通量が多いほか、温暖な気候で塗装を乾燥させやすいと考え、活路を見い出した。

車両塗料事業部の高野弘行副事業部長はアジア市場の将来について「当社の売り上げに占める比率はまだ低いが期待は大きい。モータリゼーションの途上にあり、溶剤系塗料による補修実績が少ないためか、水性塗料への抵抗が少ない。拡販の可能性が十分にある」と有望だとした。今後は海外アフターサービス充実を目指し、インストラクター教育を実施する予定だ。

BP市場では、自動車の100年に1度の大変革に伴い今後も衝突事故の減少、人手不足、補修が難しい高難度色の増加といったさらなる環境変化が訪れることが必至だ。塗料メーカー各社は一歩先に進んで市場を俯瞰しながら販売店、BP事業者の業務を支援する商品、仕組みづくりを実践して大きな変化を乗り越え、さらなる発展を目指していくことになる。

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