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2019年11月11日

日刊自連載「補修塗料新時代」(上)転換期の攻防

塗料メーカー各社が、縮小の続く国内自動車補修用塗料(自補塗料)市場の中でさらなる成長を目指し、さまざまな戦略を打ち出している。

日本塗料工業会(毛利訓士会長)の調べによると、自補塗料市場は1989年には約450億円だったが、2017年度には300億円を下回って30年ほどの間に漸減した。今後は先進運転支援システム(ADAS)を搭載した車の普及に伴う衝突事故の減少によって、さらなる市場縮小が懸念されている。各社は水性塗料や人手不足を支援する塗装機材、海外市場など大きな伸びしろが見いだせる分野に注力し、厳しい環境を乗り越えていく構えだ。 塗料各社は、市場が縮小傾向にもかかわらず売上高の維持を実現し、新たな戦略の成果が表れ始めてきた。

日本ペイントは、水性塗料と大型車両用塗料が売り上げをけん引した。特に水性塗料では下地が完全に乾燥する前に上塗りを可能にしたことで「作業性向上につながるとして板金工場から高い評価を受けて引き合いが増加した」(販売本部ARI販売部の松本顕取締役部長)と分析。調色システム「カラボ」も、人手不足への対応と作業品質が高まるとの認知が進み、納入実績を増やしつつある。

「市場縮小にもかかわらず、売り上げをキープできているので好調だと言えそうだ」と考えるのは、関西ペイントの自動車補修塗料販売本部長の真貴田厚取締役だ。水性・溶剤塗料とともに大型車用塗料など各分野で一定以上の数量を獲得し売り上げを維持した。特に水性塗料は昨年比3割増、環境に配慮した大型車補修用塗装システム『レタンPGエコフリート』シリーズは同2割増と好調に推移した。

ロックペイントは、大型車両用塗料の伸び追い風となった。防錆力に優れた塗料「ロックメタルアーマーエコ」が融雪剤や潮風に悩む大型車の運行事業者の評価を得たことを機に、この1、2年ほど大型車両用塗料で攻勢を強めた。車両塗料事業部の高野弘行副事業部長は「全塗装では使用塗料を同一メーカー品にしたほうが作業しやすい。メタルアーマーの特長を訴求して、当社製品に統一するよう各整備事業者への提案を強化している」と話す。

イサム塗料は、他社に先駆け水性塗料を投入したことで培ったノウハウを生かしながら顧客へのアピールを強化している。環境に優しい水性塗料は、作業環境の改善に大きな効果を示すため、従業員の獲得にも役立つ。このことを提案し実績を高めた。岩倉伸介取締役は「水性塗料は作業効率が落ちるというイメージを持つ事業者がいるが、特性を正しく理解いただく機会を積極的に設けて販促につなげている」と成果を述べた。

大日本塗料は、車体から足回り用までの塗装製品のラインアップを拡充して新規開拓に取り組んだ。塗料事業部門車輌産機・プラスチック塗料事業部の関幸雄事業部長は「防錆力に注目した整備業者が下回り塗装に注力するようになった。その対応に努力した結果、シャーシ用塗料や防錆剤が寒冷地の分解整備事業者や新車ディーラーに採用されている」と説明する。

各社は今後、自動運転技術の普及など事故の未然防止を図る車両のさらなる普及をにらみながら、時代にマッチした補修用塗料、関連機材の提案を高度化し、厳しい環境下での収益力向上を競うことになる。

日刊自動車新聞11月8日掲載

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