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2019年11月9日

地域の自動運転に手応え SIPシンポジウム長野県伊那市の実証 利用者の7割以上が評価、収益化など課題

内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は2日、東京モーターショーの会場でシンポジウムを開催した。地域の自動運転への取り組み例として、長野県伊那市の飯島智企画部長が登壇し、これまでの実証実験で得た手ごたえや課題を共有した。自動運転バスを使った公道での実証を通じて「地域の7割以上の人が自動運転に一定の評価をしている」とする一方「ビジネスの継続に必要な資金面が一番の問題」と語った。 伊那市は南アルプスと中央アルプスに囲まれた中山間地域で、人口は7万人弱。地域面積は東京23区より大きく8割以上を山林が占める。

中山間地域ならではの移動課題への解決策

人口減少・少子高齢化に伴い、仕事の担い手不足や生活基盤の脆弱さなど「喫緊の地域課題がたくさんある」(飯島氏)という。伊那市は、こうしたさまざまな悩みに対してIoT(モノのインターネット)を駆使して解決する取り組みを進めている。

移動の課題に関しては、自動運転バスをはじめ、人工知能(AI)を活用した配車サービス、ドローンによる荷物配送などを実証で積極的に試し、実用化に向けた準備を進めている。

移動の課題に関しては、自動運転バスをはじめ、人工知能(AI)を活用した配車サービス、ドローンによる荷物配送などを実証で積極的に試し、実用化に向けた準備を進めている。このうち、自動運転については、昨年にSIPの一プロジェクトとして多くの人が試乗できるようにバスタイプを用い、道の駅周辺を利用した実証を行った。 公道実証を通じて、自動運転サービスを利用した地域住民にアンケートをとったところ、7割以上の人が評価し「社会受容性の担保につながる」(同)と手ごたえを示した。一方、実証で浮き彫りになった課題としては、一般車と自動運転車が混在したときのコミュニケーションのとり方や自動運転車が路肩に退避するスペースの確保、路肩駐車をセンサーが検知するたび、自動運転が機能が止まることを挙げた。

伊那市としては、今年度内には自動運転技術を地域公共交通に取り入れた運行モデルを構築し、来年度から一部地域でサービスを始める計画だ。

自動運転は高齢化が進む地方部の移動を支える方策として効果的で、交通空白地での移動や免許返納後の足など「困っている人はものすごくいる」(同)という。ただ「都会のようなあふれるニーズがある地区と違って、パイが小さいので、サービスモデルとして考えたときにマネタイズ(収益事業化)しないのが一番の課題」と語り、国からの補助金といった資金投入の必要性を強調した。飯島氏は新技術の導入に当たって「主な利用者である高齢者のITリテラシーを挙げることが必要」と見る。例えば、AIを活用した自動配車の乗合タクシーの実証を行ったところ、60歳以上の利用者が9割で、利用申し込みの方法も90%が電話だった。

新サービスの申し込みはネット上のアプリケーションを通じた予約システムが想定される。伊那市は、中山間地域で加入者が多いケーブルテレビに着目。テレビをインターフェースにリモコンで操作できる仕組みを今年度中につくる考えだ。

SIP第2期の自動運転(システムとサービスの拡張)の葛巻清吾プログラムディレクターは「自動運転はまだまだ未熟な技術だが、少しでも社会的課題に貢献できるのであればいち早く実用化していきたい。一方方向の情報提供ではなく、対話形式を重視して双方向のコミュニケーションを続けていきたい」とシンポジウム開催の狙いを語った。

日刊自動車新聞11月7日掲載

 

開催日 2019年11月2日
カテゴリー 展示会・講演会
主催者

内閣府

開催地 長野県伊那市
対象者 一般,自動車業界