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2019年11月5日

トヨタ系大手部品7社・中堅6社の4~9月期決算

トヨタ自動車系大手部品メーカー7社は31日、2019年4~9月期連結業績を発表した。

円高のほか中国やインド市場の不振で4社が営業減益を強いられ、デンソーやジェイテクトなど5社が通期業績予想を下方修正した。各社は生産性向上や設備投資の圧縮などに取り組むが、成長市場に向けては「やるべきところは着実にやっていく」(デンソーの山中康司副社長)と必要性を吟味しながら成長投資を続ける構えだ。
営業減益幅が大きかったのはアイシン精機。約200億円の合理化努力などを積み上げたものの、主に中国で自動変速機(AT)販売が振るわず、営業利益が半減した。大がかりな投資に伴う固定費や償却費負担も重く、同日にAT子会社のアイシン・エィ・ダブリュとの経営統合を発表するなどグループ経営の効率化を急ぐ。ただ、中国市場について伊勢清貴社長は「米中の貿易戦争という覇権争いだからすぐには戻らないが、潜在性が高いし、どこかで戻ってくる」と語った。

デンソーも市場減速や為替影響により営業減益で通期予想も下方修正した。ただ、第2四半期だけで見ると30億円の増益。松井靖専務役員は「収益力は上がっている。環境が下振れしている中、(通期で)増益を果たす自信がある」と述べた。

ジェイテクトの通期予想はベアリングや工作機械が苦戦し、期初から一転して減収減益になる。安形哲夫社長は「努力代(しろ)分を見込んで700億円の増益の予測を出したが、我々の改善計画が追いつかなかった」と振り返った。北米でのベアリング工場を閉鎖するなど構造改革費用も計上した。

トヨタ紡織は欧州子会社の資金流出事案に伴う33億円の損失見通し額の影響で通期の営業利益を下方修正した。ただ、この影響を除けば増益基調にあり、沼毅社長は「稼ぐ力のオペレーションの実力は上がってきている」と話す。一方で「環境変化の方が我々の稼ぐ力を超える可能性がある」とも語り、引き続き体質強化に力を入れる。
グローバルで事業展開する大手だけに中国やインド市場の減速が響いた格好だ。しかし「目先の台数影響だけでなく、インドという市場を意識した取り組みをしていく」(トヨタ紡織の沼社長)、「中国は2~3年先を見据えている。いずれにしろベクトルは右肩上がりで市場はまだ膨らむ」(豊田合成の宮﨑直樹社長)と、各社は両市場の潜在力をにらみ、成長に向けた種まきを続ける考えだ。

トヨタ自動車系中堅部品メーカー6社の2019年4~9月期連結業績は、フタバ産業をのぞく5社の純利益が減少した。トヨタ向けの取引は堅調だったが、部品単価の下落や中国市場の不振が収益面で足かせとなった。

通期業績予想は愛三工業とファインシンターが下方修正した。中国については一部で「受注は回復の兆しを見せている」(大豊工業)との見方があるものの、大半は「中国全体の成長率については減速感がかなり出ている」(フタバ産業の吉貴寛良社長)と身構えている。

増収増益はフタバ産業と中央発條の2社。フタバは前期に集中した設備の更新負担が一服したところへ「RAV4」「カローラスポーツ」向けの部品販売が好調で利益を押し上げた。中央発條も同じ構図で、北米事業の構造転換費用をトヨタの新型車効果が吸収して営業増益を確保した。一方でフタバは「中国と北米の市場が貿易摩擦でリスクサイドに振れつつある。後半はリスクを見込んでおきたい」(吉貴社長)として通期予想を据え置いた。

東海理化は売上高こそ過去最高を更新したものの、部品単価の下落が響いて前年同期比5・1%の営業減益を強いられた。三浦憲二社長は国内事業で消費増税の反動減が少なかったことを喜びつつ、「利益はなかなか上がらない。われわれの原価がまだまだ高いのかもしれない」とこぼした。

愛三工業も売上高は前期並みだったが、部品単価の下落と労務費などれない」とこぼした。愛三工業も売上高は前期並みだったが、部品単価の下落と労務費などの増加を収益改善で補いきれず、約2割の営業減益だった。野村得之社長は「元、ウォンをはじめ急激に円高が進行したほか、中国での部資材料費の高騰が想定を上回った」とも語り、「厳しい経営環境が続くが、原価低減や新規製品など足もと固めに力を入れていく」とした。

ファインシンターは中国事業の不振を国内や北米向けが補って増収だったが、利益面では逆に人材難に苦しむ北米で生産コストがかさんだ上、国内子会社でも品質関連費用が発生し、3割近い営業減益を強いられた。このため人材を手当てするなどして北米の収益改善を急ぐほか、研究開発費を当初計画より圧縮する。ただ、井上洋一社長は「ハイブリッド関連部品の開発・量産化や、電気自動車関連部品の開発は加速していく」と語った。
中国事業は、新車販売が好調なトヨタ向けは各社とも堅調だが「ローカルメーカー、欧米系が合わせて全体的に悪くなっている」(大豊工業)という傾向は変わらず、トヨタへの依存度が明暗を分けた格好だ。ファインシンターの井上社長は「下期もこのトレンドは変わらない。回復がいつ頃になるのかはわからない」と語った。

日刊自動車新聞11月1日掲載

開催日 2019年10月31日
カテゴリー 白書・意見書・刊行物
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対象者 一般,自動車業界