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2019年11月5日

日立AMSとの部品合併/ホンダの狙いは/クルマづくりも揺らぎかねない危機感/世界のメガサプライヤーに対抗

ホンダが系列部品メーカー3社と日立オートモティブシステムズ(AMS)の合併を決めた。ホンダ購買本部長の貝原典也常務執行役員は「技術が進化するとクルマ1台分の制御が重要になってくる」と話し、自動化や電動化が進む中で膨大なデータを統合制御できる技術の開発を新会社に強く求めた。

自動車業界は専門外だったIT(情報技術)の取り組みが欠かせず、次世代車開発の負担が増加する中で、先進分野の一部を部品メーカーにゆだねるケースも出てきている。ホンダが系列再編に踏み切ったのは、サプライヤーの成長を促さなければ、自社のクルマづくりも揺らぎかねないと危機感を募らせているからだ。

CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に対応した次世代車には、「走る」「曲がる」「止まる」を総合的に制御するソフトウエアが必要となる。これらの開発には膨大な費用がかかるが、ボッシュやコンチネンタルといったメガサプライヤーは、先進技術の領域においてクルマ一台分を提案できる総合的なソリューションを供給する。こうしたメガサプライヤーの売上高は数兆円規模と、年産数百万台レベルの完成車メーカーを上回るほどで、存在感を強めている。

今回、統合を決めたホンダ系列の部品3社は、売上規模こそ数千億円ではあるが、それぞれの領域で次世代技術開発を進めていた。

ケーヒンは、電動車向けのパワーコントロールユニット(PCU)などに強みを持ち、高効率なパッケージを展開。

ショーワは高度な自動運転車に対応するステアリングシステム「ステア・バイ・ワイヤ―・システム」(SBWS)の開発に注力している。

日信工業も自動運転技術の実用化を見据えた電動パーキングブレーキ(EPB)を開発する。

これらに日立AMSが持つ車両統合制御システムやデジタル技術サービスの基盤「ルマーダ」を組み合わせることで、グローバルで台頭するメガサプライヤーに対抗する。

ホンダはかねて、ホンダ向け比率が高い系列部品メーカーに〝他販〟を増やすよう促してきた。納入先の完成車メーカーがホンダ1社では、サプライヤーの技術開発力やコスト削減における競争力が磨かれないためだ。統合後の新会社では、日立製作所が66・6%、ホンダが33・4%出資し、社名についても「日立の名が入る可能性が高い」(ブリス・コッホ日立AMS社長)という。ホンダ色をあえて薄めることで、他の完成車メーカーにも「広く拡販していく」(貝原常務執行役員)考えだ。

メガサプライヤーが存在感を強める中、完成車メーカーを頂点に系列部品メーカーがぶら下がるピラミッドの構図は崩れ去りつつある。「チームホンダ」(八郷隆弘社長)を標榜してきたホンダだが、デンソーなどを抱えるトヨタグループに比べ系列部品メーカーの規模はそれぞれ小さい。それだけに莫大な開発投資が求められるCASEへの対応が課題となっていたが、ホンダはそれぞれに強みを持った中核の系列サプライヤーを束ね、日立の後ろ盾を得ることで世界に通用するメガサプライヤーを生み出し、技術やコスト競争力を磨く考えだ。

日刊自動車新聞11月1日掲載

 

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