2019年10月31日
東京モーターショー 月面探査に夢広がる フューチャー・エキスポで自動車業界 自動運転や水素技術を活用
アイスペースのローバー(下)とランダー(上)
自動車業界では水素エネルギーへのシフトが起こっている。東京モーターショー2019と同時開催されている「フューチャー・エキスポ」では、未来のエネルギーをテーマに水素を活用した参考出品が多く登場した。こうした中で自動車業界の月面探査に対する取り組みが関心を集めている。月には数十億㌧の水が存在すると考えられており、環境規制の観点から欧州メーカーを中心に燃料電池車(FCV)への開発熱が再び高まっている自動車業界は、月面探査に投資を始めているケースも出てきた。自動運転技術を応用できる可能性もあり、特別展示スペースを設けて紹介している。
月面探査事業のスタートアップ企業のispace(アイスペース、袴田武史CEO、東京都港区)は、ランダー(月着陸船)とローバー(月面探査機)を展示した。最終的には地球と月の輸送サービス構築に向け、月面のマップデータ取得や水質調査に取り組む。ランダーは、ロケットの上部に取り付け、着陸の際には逆噴射させることで、衝撃を緩和させる機能を持つ。ランダーの上部は地球の管制塔からの指令を受けるセンサーや周囲のマップを製作する機械を搭載している。下部には推進剤を積む。ローバーは無人の自律型ロボットで、指示した操作通りに月面を走行する。現在、エネルギーとして使用している推進剤のヒドロキシンを水素で代用するよう研究を進めているという。アイスペースは米国の民間宇宙ベンチャーのスペースXと共同で、2021年に月面着陸、23年に月面探査を目指す。
トヨタ自動車の有人与圧ローバ(模型)
トヨタ自動車は「有人与圧ローバ」の模型を展示した。トヨタは7月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と有人与圧ローバの共同開発協定を結んでおり、29年の打ち上げを目指している。実物の大きさはマイクロバス約2台分、2人が滞在可能で居住空間は4・5畳程度。有人与圧ローバの中では宇宙服を脱いで滞在できる仕様にする。月には空気がないことに加え、崖やクレーターなどの有人での月面探査を難しくする要因がいくつもある。JAXAの衛星「かぐや」からのデータとトヨタの持つ自動運転技術を組み合わせ、月面探査しながらの地図製作を計画する。
ブリヂストン、月面有人与圧ローバ用タイヤ
また、トヨタの有人与圧ローバには、ブリヂストンが金属製タイヤを供給する。18年9月にトヨタからの要請を受け、宇宙での過酷な環境に適したタイヤ製作に取り掛かった。耐久温度はマイナス170度から120度。やわらかいラクダの足を参考にして接地圧を下げたほか、けん引力を高めるためにタイヤ本体をやわらくして設置面積を広げた(A4用紙6枚ほど)。
自動車業界が取り組んでいる水素エネルギーや自動運転などの最新技術が月面探査にも活動の場を広げようとしている。
日刊自動車新聞10月30日掲載
カテゴリー | 展示会・講演会 |
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主催者 | 日本自動車工業会 |
対象者 | キッズ・小学生,中高生,大学・専門学校,一般,自動車業界 |