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2019年10月21日

トヨタ、新型リチウム電池開発

ヤリスに搭載予定のリチウムイオン電池パック

トヨタ自動車と電池子会社のプライムアースEVエナジー(PEVE、北田眞治社長)は、新たなリチウムイオン電池のセル(単電池)を開発した。

電極材料などを見直して充放電能力を現行セルに比べ約2倍に高めた。来年2月発売の「ヤリス」を皮切りに順次、リチウムイオン電池搭載車に採用し、従来のタイプから切り替えを進める。これまでは捨てていた制動エネルギーの回収率が高まり、一段の燃費向上が見込まれる。

トヨタは「プリウス」「アクア」などの主力HVにニッケル水素電池を、「プリウスα」「プリウスPHV」にリチウムイオン電池を搭載している。HVにニッケル水素電池を多用しているのはコスト競争力と安全性で実績を積み重ねてきた上、HVはモーターだけで走る場面が少なく、エネルギー密度を稼ぐ必要がないからだ。ただ、車体の小さいヤリスでは後席下にバッテリーを収納するため、小型化が可能なリチウムイオン電池を採用した。容量は公表されていないが、現行「ヴィッツ」(6・5Ah)と同程度に設計したという。

今回、セル内の正極材料などを全面的に見直し、内部抵抗を減らすことで充放電性能を飛躍的に高めた。HVに搭載した場合、制動エネルギーを停止寸前までバッテリーに蓄えることができ、そのぶんエンジン停止時間を長くできたり、モーターによるアシスト力を強めたりできる。ニッケル水素電池だと制動時に充電が追いつかないため、制動途中で回生した電力を捨てざるを得なかった。

ヤリスHVの燃費は年末にも公表するが、トヨタは「世界のHVのなかで最高となる」(吉田守孝副社長)としており、「プリウス」(JC08モードで39㌔㍍/㍑)を超えて40㌔㍍㍑を上回る公算が大きい。
トヨタは当面、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池を使い分けていく方針だが、コストが下がれば小型で性能も高いリチウムイオン電池の搭載車種が広がりそうだ。

日刊自動車新聞10月18日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

トヨタ自動車、プライムアースEVエナジー

対象者 中高生,大学・専門学校,一般,自動車業界