会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2019年10月17日

日刊自連載「交通安全・医理工連携の今 世界一への挑戦」(6)一般社団法人 日本交通科学学会 理事(総務担当)吉村俊哉

「学会」のイメージといえば通常「研究者の世界」のこと、世間一般の日常には関係が薄い…と思われがちではないでしょうか。
日本交通科学学会の前身、日本交通科学協議会(交科協)の会員に加えていただいてから四半世紀ほどにもなりますが、私はいわゆる研究者の生活をおくってきた身の上ではありません。JAF(日本自動車連盟)職員として約26年、交通安全啓発ほか様々な実務に携わった後、7年ほど前からフリーで安全運転アドバイス等にかかわっています。

この学会を知ったのは、昭和50年代後半の学生の頃だったでしょうか。文系の心理学ながらも理系めいたことに心惹かれ「人間工学」を志し、指導をくださった先生の影響で「交通心理学」という分野を知った頃、資料探しの苦労の中でその名を見たことかと思います。ほぼ同時期に運転免許を取得し、あこがれ続けた自動車を自ら操れるようになったことも追い風でした。

当時は自動車保有台数が現在の約半分程度、道路整備もまだ途上で、学部時代を過ごした新潟と東京の間の関越自動車道も前橋~長岡間が未開通でした。後のJAF時代に「日本のモータリゼーションは昭和30年代末から」と教わりましたが、そのセンでいえばまだ20年経過程度だったのでしょうか。その中で若葉ドライバーでもあった私は、学会員としても活躍されていた故・加藤正明先生の著書と出会い、この方面の動きを知るきっかけを掴んだと今も思います。

後年、この学会で加藤先生に直接お目にかかる機会も得ましたが、そのほかにも「三角停止表示器材」「大型車の後部反射板」ほか反射材活用研究の数々、生々しい解剖写真付きでの交通事故傷害の実態と保護装置等などに関すること、現在ほぼ全国で活躍するドクターヘリがどれだけ関係者のご労苦を経て実現にこぎつけたか…などなど、実に数多く様々な学術の事象と出会うことができたと感じています。今日では至極当然のように社会に溶け込んでいることも、そこに至るまでの道のりには数多い苦労があったわけで、それを垣間見ながらこられたのは実に貴重な経験であったといえましょう。

研究者にとっての学会は研究発表、意見交換、そして業績という意味合いなのでしょうが、その点私なぞは「勉強させてもらおう」のクチだったわけです。しかし多くの先生方から学ばせていただいたことは貴重な情報として、さらに世間一般に広くお伝えする業務活動の原動力の一つとなったことは、相違ありません。

思えば、世間一般では定年間近という齢(よわい)になった今もこうして、否、予想以上にこの組織と係累を持たせていただいていることには、正直あらためて不思議な縁を感じます。今も失われない学会の特色の一つは「真面目に志す人を広く受容する」ことであり、それに出会えた私はラッキーだったかもしれません。
世間に学会は数あれど「実務者も多く包容力のある勉強会」のひとつとして、読者の皆さまにも興味を持って気軽に足を運んでいただける、そのような「出会いの場として役立つことの魅力」を維持することは、世話役の一人として切望するところでもあります。

日本交通科学学会 医療、工学、自動車メーカー、行政など幅広い分野からトップレベルの専門家・識者が参加。それらの知見を融合して安全な交通社会づくりを支援することをねらい半世紀以上、活動を展開している。

日刊自動車新聞10月12日掲載

 

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日本交通科学学会

対象者 一般,自動車業界