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2019年9月28日

日刊自連載「自動運転攻防 外資系サプライヤー次の一手」(上)課題多きレベル3

大手外資系サプライヤーが自動運転の分野で凌ぎを削っている。すでに量産しているセンサー類は各社とも「レベル2」からシステムに主導権を持たせる領域を限定した「レベル2+」への搭載を想定しており、運転の主導権が人からシステムに移る「レベル3」以降に関しても来年から製品投入が本格化する見通しだ。

一方で「レベル2から3へのステップは大きい。技術でもコストでもクリアしなくてはいけない点が多い」(コンチネンタル・オートモーティブ・ジャパンのバート・ヴォーフラム社長)。レベル3をスキップして「レベル4」の開発に専念する自動車メーカーやサプライヤーも出てきており、動向に注目が集まる。

米国の自動車技術者協会(SAE)の基準では、自動運転のレベル0~2は事故責任はドライバーが持ち、4以上になるとシステムが持つ。その間のレベル3では人間とシステムの両者が担うことになる。運転の主導者が状況に応じて人間とシステムで切り替わるためだ。政府は2020年をめどにレベル3以上の実用化を目標に掲げており、自動車メーカーもそこに一つの指標を置く。国内ではホンダが20年に高速道路での渋滞時にレべル3の技術確立を目指している。

サプライヤーのレベル3以上を想定した製品開発も山場を迎えている。独ボッシュは今秋から第5世代と位置付けるミリ波レーダーの量産を開始する。視野角を先代より30度拡大し120度まで対応するほか、前方の検知範囲も先代より50㍍長い210㍍まで伸ばした。

5世代目はレベル2相当を想定するが、21~22年に投入を検討する上級モデルはレベル3~4の精度を見込む。「20年代初頭には(センサー類で)レベル4に対応する製品群を揃える」(日本法人の自動運転システム開発部千葉久ゼネラルマネージャー)。

唯一レーザースキャナー(LiDAR)「スカラ」を量産する仏ヴァレオは、次世代モデル「スカラ3」の開発を進める。交通量が多い市街地でのレベル4以上に対応し、20年以降に投入を見込む。
独コンチネンタルは、量産しているセンサー類でレベル2までを実現する。「レベル3以上に行くにはLiDARが必要」(日本法人のヴォーフラム社長)との見解から、20年に高解像度3DフラッシュLiDARの納入を開始する予定だ。

21年には各社のレベル3対応の製品群が出揃いそうだが、自動車メーカーはレベル3の搭載に今一歩踏み込めずにいる。法整備との兼ね合いの面もあるが、緊急時には人が手動で運転することになるレベル3は、システムによるドライバーの状態把握が不可欠で難度が高いと言われている。また、レベル2よりも搭載するレーダー類の数は増え、複数のLiDARやハイパフォーマンスコンピューター(HPC)なども必須になるため「システムコストはレベル2の2倍以上になる」(日本法人のヴォーフラム社長)ためだ。

日産自動車や独BMWが一定条件下でのみ、ハンドルから手を放した状態で自動走行するハンズオフ機能を日本国内で投入するが、あくまでドライバーに運転の主導権を置くレベル2+の位置付けにとどまる。商用車では、UDトラックスや三菱ふそうトラック・バスがレベル3の搭載を見送り、機械に全権を委ねるレベル4の開発に集中する方針を出している。当面はレベル2+の技術を磨き、レベル3をスキップしてレベル4に移行する流れが出てきている。

サプライヤーにもその潮流が出てきている。独ZFは、8月に開催した自社の技術イベントで当面は乗用車向けにはレベル2+の開発に注力する方針を発表した。「インターチェンジで別の高速道路に乗り換える時や合流地点での自動走行機能が従来のレベル2から新たに加わる機能」(日本法人のロバート・サイドラー研究開発本部本部長)と捉えており、対応する技術開発を急ぐ。コンチネンタルは「段階を踏んで各レベルの製品群を提供していく」ものの、「レベル3に対応するLiDARだと高価なものでコストが数千㌦規模になることもある。各センサー類の性能をさらに高め、搭載数を減らすことが必要」(日本法人のヴォーフラム社長)と見ており、コストとパフォーマンスの両立を課題に挙げる。ボッシュも「一般消費者が購入するような量産車の自動運転技術はステップ・バイ・ステップで開発する。まずは渋滞時に限定したレベル3の搭載が目標だ」(自動運転システム開発部門ミヒャエル・ファウステン ヴァイス・プレジデント)とボッシュ単体としてはレベル2+相当の技術を21年をめどに実現する方針だ。

自動車メーカーの要望に応えるため、さまざまな可能性を考慮して技術開発を進めることが前提だが、コストや時間には限りがある。どの領域に投資を進めるかサプライヤーには取捨選択が迫られており、レベル3が重要な岐路になりそうだ。

日刊自動車新聞9月25日掲載

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