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2019年9月5日

ドライブレコーダー需要再燃 あおり事件受け 用品店で販売急増

ドライブレコーダーが爆発的な売れ行きを見せている。茨城県守谷市の常磐自動車道で8月10日に起きたあおり運転殴打事件を受け需要が再燃し、カー用品店やディーラーで販売が急増している状況だ。一部のモデルに欠品、品薄感が出ている模様で、都内のディーラーでは商品の取り付けを納車の後日に行うケースも出始めている。車両前後を録画する2カメラモデルが売れ筋だが、車室内を含む全方位録画が可能な360度タイプのニーズも高まりを見せている。 「前方カメラのみのドライブレコーダーを使用しているが、常磐道での事件を知って、車内や後方が映るものに替える必要を感じた。2カメラや360度タイプを検討している。これで万が一に備えられれば」。都内のカー用品店で男性は話した。

カー用品最大手のオートバックスでは、8月11日頃に始まったテレビ報道直後から需要が急増。「報道前の販売台数は前年対比で1・1倍程度だったが、その後は2倍超に増えている」(同社)状況だ。

タイプ別では360度タイプのニーズが高まっている。報道前の1週間(8月5~11日)を基準にしたタイプ別の販売伸長率を見ると、8月12~18日は前方のみを録画する1カメラモデルが1・5倍、前後2カメラモデルが2倍、360度モデルが2・3倍となった。

さらに、8月19~25日になると1カメラモデルが1・3倍とわずかに下振れしたものの、前後2カメラモデルは2・4倍、360度モデルは5・6倍に急増している。

イエローハットでの販売も好調だ。同社によると「2017年は東名高速道路で起きたあおり運転事件を受けて需要が高まったが、その時以上の販売ペース」だという。先週末の販売台数は前年対比で4倍。売れ筋は「完全に前後2カメラモデルになっている」。360度タイプの需要も増えている状況だ。

東京西部のディーラーでは「8月に入り売れている。今後もこの傾向が続けば、後付け対応をせざるを得ない」と話す。2カメラタイプの取り付けが増えており、今後は「メーカーが一部改良などに合わせ、(ドライブレコーダーを)標準装備設定する可能性もある」(ディーラー首脳)とみている。

トヨタ部品東京共販ではタクティーから仕入れているドライブレコーダーの8月の卸売台数が前年同月比3・8倍に拡大。2カメラタイプの欠品が相次いでおり、消費者の自己防衛意識が急激に高まっているとみている。

ドライブレコーダーは15年頃から消費者の認知が進み、取り付け台数が増えている。ただ、当時は前方のみが録画できるものなど、機能を絞り込んだ商品が主流で、販売台数も前年比微増程度で推移していた。 ところが17年10月の東名高速道で発生したあおり運転による死亡事故以降、販売台数が跳ね上がった。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計では、17年度下半期(10~3月)が前年同期比126%増と2倍以上に増えている。

また、それまでと異なり、ナンバープレートなどを確実に録画できる高画質タイプや前後2カメラタイプの需要が高まり、メーカーでも増産対応に追われる状況となっていた。

ドライブレコーダー需要が再燃した形の今回は、高額だが360度タイプへの関心が高まり、販売も伸びている。商品売り上げに加え工賃収入も見込めるだけに、カー用品業界、新車ディーラーには特需が発生することになりそうだ。

エアコン、ナビゲーションシステムなど、カー用品は人気が高まると新車標準装着に取り込まれる歴史を刻んできた。東京東部のディーラーによると、個人向け新車販売に占めるドライブレコーダーの装着率は7月が42・5%、8月が28日までで50・9%。業界には「いずれ標準装着になる」との見方も出ている。

日刊自動車新聞9月2日掲載

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