2019年9月3日
災害時に電力供給サポート 日産・三菱自 自治体と協定
日産自動車と三菱自動車が電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)を移動可能な蓄電池として訴求し、普及を進めようとしている。
特に活躍の場が期待されるのが災害時の電力供給のサポート。大容量の蓄電池を搭載しているというEVの特色を生かして、停電時は電動車の電力で補おうというものだ。環境対策はもちろん、電動車が持つ価値を生かして地域に貢献する。
日産は30日、災害発生時の電力確保をEVで支援しようと、地方自治体との連携を加速すると発表した。EVを活用した災害対策で、2019年度末までに約30の自治体や企業と連携する。現在は北海道でコンビニエンスストアを運営するセコマや、熊本市など九つの自治体・企業と連携している。
連携協定を締結すると、地元の日産販売会社が保有している「リーフ」の試乗車などを避難所や自治体の指定する場所に派遣。リーフから給電器を介して生活に必要な電力を供給する。
これは大容量バッテリーを搭載しているEVならではの取り組み。今年1月に発売したリーフの高性能モデル「リーフe+」は62㌔㍗時のバッテリーを搭載している。これを用いればスマートフォン(スマホ)は6200台の充電が可能。また、災害対策本部で使用される約4日分の電力を補える。
東京都練馬区など災害連携協定を結んだ自治体のなかには、公用車をリーフに切り替えたところもある。普段は公用車として使用しながら、災害発生時には非常用電源として利用する。価格はリーフe+が約416万円~なのに対して、同等容量の一般的な定置型蓄電池は1500万円以上。これは「大量生産でコストを下げられる自動車だからこそ実現できた価格」(日本事業広報渉外部の大神希保担当部長)だ。日産は、災害時の電力供給にも貢献できるEVを「単なる移動手段ではなく、動く蓄電池という価値認識を広める」(同)ことでEVの普及につなげる。
三菱自も同日、災害発生時に電動車を被災自治体に速やかに提供する「DENDOコミュニティサポートプログラム」を推進すると発表した。車両から電力を供給できるPHV「アウトランダーPHEV」を自治体に貸し出し、災害時の給電などに活用する。自治体と災害時協定を結ぶことで電動車を速やかに提供できる体制を整える。22年度を目標に全国の自治体と災害協定締結を目指す。
アウトランダーPHEVは、エンジンで発電した電気を駆動用バッテリーに蓄え外部に給電できる。大規模停電をもたらした18年9月の北海道胆振東部地震ではこうした機能が注目された。18年度のアウトランダーPHEVの販売台数は前年度比32・8%増と、口コミの影響もあって大幅に台数を伸ばした。
三菱自では、これまでも11年3月の東日本大震災を皮切りに16年の熊本地震などで電動車を被災地に貸与し、電源として活用してきた。自治体との災害協定では12年9月に京都府と締結済み。19年9月には静岡県、近く岡山県や岐阜県、和歌山県などとも協定を結ぶ予定だ。今後も同プログラムを自治体に訴求し、全国で災害地に電動車を供給できる体制を整える。
日刊自動車新聞8月31日掲載
カテゴリー | 社会貢献 |
---|---|
主催者 | 日産自動車(株)。三菱自動車工業(株) |
対象者 | 一般,自動車業界 |