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2019年9月3日

セルフ給油所 1万ヵ所を突破、競争激化、人手不足背景に成長

セルフサービス方式の給油所(セルフSS)が1万カ所を突破した。石油情報センター(東京都中央区)がまとめた出店状況調査によると、2019年3月末のセルフSSは前年同期比172カ所増の1万100カ所。1998年4月にセルフSSが解禁されてから21年で初めて1万カ所を超えた。フルサービスSSに比べて効率的なセルフSSは、全国的なSS減少が続く中で、全SSに占める割合が33・6%まで上昇した。販売競争の激化や人手不足を背景に、今後もセルフSSは増える見込みだが、一方ではガソリン需要の減少が続く中で撤退する給油所も少なくないようだ。

[制度導入から21年] 今年3月末の全SS数は3万70カ所で、前年同期より677カ所減少した。94年度に6万421カ所あったSSはほぼ半分に減っており、3万カ所を割り込むのは時間の問題と見られている。

採算性の悪化などによるSS閉鎖に歯止めがかからない状況にあって、経営コストが安いセルフSSへの参入は着実に進んでいる。01年度に1千カ所を超えたセルフSSは、09年度に8千カ所を超えるまでほぼ毎年1千カ所単位で急増。9千カ所を超えた13年度以降は増加数が鈍化したものの、制度導入から21年で1万カ所に到達した。

都道府県別でセルフSSが最も多いのは愛知県の620カ所。2位は北海道の529カ所、3位は埼玉県の495カ所だった。4位以下を含め、上位10都道府県の顔ぶれは前年同期と同じだった。

[ガソリン需要は減少] 一方、全SSに占めるセルフSSの割合(セルフ化率)は、神奈川県が50・6%でトップ。神奈川県のセルフ化率は前年同期が48・9%と50%に迫っていたが、今回の調査で初めて半数を超えた。2位は49・4%の埼玉県、3位は44・5%で福岡県だった。セルフ化率は大都市部を抱える府県で高くなる傾向が示されている。

堅調な増加が続くセルフSSだが、ガソリン需要の減少はセルフSSの経営に重くのしかかっている。燃費性能に優れるハイブリッド車や軽自動車の普及、人口減少などにより、国内のガソリン需要は05年度をピークに減少をたどっている。経済産業省の資源・エネルギー統計によれば17年度のガソリン需要は5183万㌔㍑で05年度の6140万㌔㍑から約15%減少した。今後も低燃費車の保有台数は拡大が続くことから、国内のガソリン販売量は20年度までに5千万㌔㍑を割り込むことも予測されている。

[参入ペースは鈍化] こうした需要環境を背景に、セルフSSへの参入と撤退のバランスがどう変化するかを注視する声もある。過去3年間の参入と撤退の推移を見ると、18年度は参入が248件、撤退が76件、17年度は参入が215件、撤退が143件、16年度は参入が271件、撤退が143件だった。

セルフSSが年間約1千カ所ペースで増加していたころは参入が圧倒的に多く、撤退は少なかったが、ここ5年ほどは参入のペースが落ちた割に撤退するSSが減らない傾向を指摘する関係者もいる。

セルフ解禁とほぼ同時にフルサービス給油からセルフ給油に切り替えた千葉県市川市のSSは、「ガソリンの販売量は年々減少している。ここ数年でセルフに参入した同業者のなかには利益が出ずに苦しんでいるところも少なくない」と話す。

SS経営は、需要が減少するなかで過当競争や人材不足、後継者問題などが絡み、今後の見通しが立ちにくい状況にある。SS関係者は「いまはセルフに活路を求めようとする事業者がいるが、いずれは頭打ちになるのではないか」と心配そうな表情を見せる。

日刊自動車新聞8月28日掲載

 

 

 

 

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 石油情報センター

対象者 自動車業界
リンクサイト

石油情報センター

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