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2019年3月13日

損保各社、事故対応はAIで短縮 事故状態や症状 判例検索を効率化

損保各社で事故対応の時間短縮を目的に、人工知能(AI)で過去の裁判例を検索する動きが広がってきた。三井住友海上火災保険は2月末、検索システムの本格運用を開始し、判例検索を効率化。対人事故で治療終了から保険金支払いまで解決にかかる期間の30%短縮を目指している。すでに、あいおいニッセイ同和損害保険は昨年4月、同様のシステムを導入済みで、業務にかかる時間を20%短くすることに成功した。解決までの時間をより短くできればユーザーとの信頼関係も深まるほか、損保各社の負担軽減にもつながる。損保各社にとって、AIが果たす役割は今後も大きくなりそうだ。

三井住友海上が導入した新システムは、米IBMのAI「ワトソン」を活用する。事故の状態や怪我の症状などについての文章を入力すると、数千件の候補の中から適切な判例を瞬時に表示できるようになった。
過失割合の算出などでは過去の判例をベースに精査する必要がある。これまでは膨大なデータの中から最適なものを探し出すまでに、担当者の経験と勘に頼る部分が大きく、非常に手間がかかっていた。これをAIによってマッチングさせて、検索スピードを速めていく。口語で話し言葉のように入力することも可能で、容易に扱えることも特徴となっている。

あいおいニッセイ同和では、保険金の支払業務に必要な情報検索でAIを活用している。従来、営業部門が商品や代理店などの照会に用いていたソフトウエアを応用した。判例など情報の横断検索機能によって、業務改善につなげている。損害保険ジャパン日本興亜もこうしたAIシステムの開発を急いでいる。

一方、東京海上日動火災保険は、数年前に独自のデータベースを用いた判例検索システムを導入した。「AIは活用していないが、十分に対応できている」(東京海上日動)と、業務効率化に効果を示しているという。

近年、保険商品のバリエーション増加に比例して、損保各社の業務が複雑化する傾向にある。人的資源にも限りがある中でサービス対応や処理能力を改善するため、ユーザーや従業員を支えるシステムの効果的な活用が欠かせなくなっている。こうした中で、高精度なAIによる分析の活用範囲がさらに拡大することは、間違いがなさそうだ。

日刊自動車新聞3月9日掲載

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対象者 一般,自動車業界