会員向けクルマ
biz

INFORMATIONクルマの情報館

自動車産業インフォメーション

2018年11月1日

期待される日本型MaaS、キーワードは「ユニバーサル」

202X年10月、東京に住む車賀好男さん(仮名)は紅葉が始まったばかりの京都の寺社を巡る旅行計画を立てた。家から電車と新幹線、バスやタクシー、レンタサイクルなどを駆使して目的地を巡る家族旅行。交通機関の予約と決済は当然、観光情報や途中で食事する飲食店の検索と予約、さまざまなクーポンの入手までをスマートフォンの操作でストレスなく済ました―。

出発地から目的地まで最適な手段をシームレスに提供するのがMaaS(サービスとしてのモビリティー)だ。移動手段の検索・予約・決済に加えて移動に付随する各種サービスも、一つのスマホアプリだけで完了させるのが典型とされる。

最も有名なのはフィンランドのヘルシンキで実用化された「Whim(ウィム)」。公共交通機関とバス、タクシー、レンタカー、日本では違法とされるマイカーの相乗りまでを組み合わせて最適な移動を提供する。これにより「公共交通機関の利用シェアは48%から74%へと高まった」(4月開催の未来投資会議資料)とされる。

こうしたMaaSが今、世界的に普及拡大の兆しを見せる中、日本の国土交通省が思い描く“日本型MaaS”は少し違う。そのキーワードは「ユニバーサル」。急速に進展する少子高齢化と障害者が活躍する社会、都市・地方間に存在する交通網の格差など、日本の社会が抱える諸課題を解決し、あらゆる人、あらゆる地域にとって使いやすいMaaSとは何かを模索して描く将来像が日本型MaaSだ。

日本の公共交通機関は、多くが民間企業により運営されている。それも大企業から中小まで多種多様。これをMaaSという括りで結び付けるのは困難な作業でもある。どんな事業者が、どのように連携し、どのようにサービスを統合するか…。また、組織や業種、分野の垣根を越え、基盤や環境、都市と地方の街を整備するために、必要な法律や制度、政策は何か…。考えねばならない課題は多い。しかし、国土、インフラ、交通、さらには観光までの全て一括して所管する国交省の強みが、ここに出る。

将来の経済と社会を根底から変える潜在力があるMaaSには経済産業省も関心を寄せる。経産省が念頭に置くMaaSは自動車や情報といった“産業目線”が強い。これに対し、国交省のMaaSは都市構造も含めた“利用者目線”のもの。日本型MaaSについて話し合う有識者による懇談会では「両省による連携も極めて重要」との指摘も出た。MaaSを単なる新サービスとして捉えるのではなく、少子高齢化などの諸問題でも世界のトップを走る日本が独自のMaaSを構築し、それを世界に向けて発信することが期待される。(編集委員・小口博志)

日刊自動車新聞10月29日掲載

カテゴリー 白書・意見書・刊行物
主催者

日刊自動車新聞社

対象者 一般,自動車業界